美風庵だより

幻の花 散りぬ一輪 冬日の中

大発「楼閣」

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「だいはつ」というと、一般人は自動車メーカーを思い起こすのですが、線香マニアは淡路島にある線香屋さんを思い浮かべます。大阪・堺にあった鬼頭天薫堂で「毎日香」「花の花」にたずさわった下村哲山が昭和11年(1936年)に独立し、創業した会社です。
赤貧が知ったのは、2006年に終売となった「伽羅哲山」をたまたま入手したときです。伽羅と麝香を組み合わせた素晴らしい香りを、手に入れることが出来なくなって10年以上経ちます。高額でしたが、買えるときにもっとしっかり買っておけばよかった……。
大阪・堺にあった鬼頭天薫堂を、戦後買収したのは東京孔官堂の小仲氏でした。
東京孔官堂は1966年に、現在の日本香堂に社名変更します。
日本香堂の成立過程はなかなか複雑で、まず孔官堂の東京支店であった時代があります。このころの主力製品が孔官堂の「蘭月」でした。
戦後、東京孔官堂はふたつのM&Aに成功します。ひとつは大阪・堺の鬼頭天薫堂であり、もうひとつは京都にあった香十でした。鬼頭天薫堂からは「毎日香」と「花の花」を手に入れます。香十からは、天正年間創業というブランドを手に入れます。
大発の香りに日香との近さを感じるのは、この縁の近さもあるのかもしれません。
話を元に戻すと、今回試したのは「楼閣」です。沈香と白檀をベースにした、甘くこってりとした香りがします。この香りのつくりは、日香の沈香寿山にも通じるものがあります。寿山のほうが、いくらかさっぱりめです。
楼閣よりもグレードの高いお線香は、のきなみ廃番となってしまいました。この楼閣の内容量も、むかしより減っています。いずれ円安で海外からの原料調達もどんどん困難になるでしょう。
いまのうちに、この香りが気に入っているかたは、買いだめしておくことを、控えめにおすすめします。