松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第194回

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団  名曲全集第194回|ミューザ川崎シンフォニーホール

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第194回
日時:2023年12月9日(土)14:00開演(13:15開場)
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
[出演]
指揮:秋山和慶
ソプラノ:三宅理恵
メゾソプラノ:小泉詠子
テノール:福井敬
バス:妻屋秀和
合唱:東響コーラス
管弦楽:東京交響楽団
[曲目]
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 op.125「合唱付き」
[アンコール曲]
蛍の光

9日、日帰りで秋山さんの第九を聴きに、上京しました。

毎年変動するのですが、今年の年末に聴きに行く第九の実演は、これのみです。

秋山さんの基本線は「1・2・3楽章は終楽章の前奏曲」とでも言うべきもので、むかしはどちらかと言えば前半は淡々とした印象をうけがちでした(あくまでも現在との比較)。ほんとうに文字どおり「O Freunde, nicht diese Tone!」とバリトンが歌い、これまでを否定してどんちゃん騒ぎに持ち込んでからが本番だったわけです(このスタイルは古いCDで聴けます)。

やがて若いかたを中心に、全楽章すべて快速の演奏が増える(否定→肯定。陰→陽の関係を際立たせない)につれて、秋山さんのスタイルは朝比奈さん世代ほどではないものの「重い」と受け取られるようになっていきます。本人は時速60km/hで昔どおり運転していたら、周囲の車が70km/h出すようになったような感じです。これが或る種の既聴感につながって「安定の第九」という評価につながっているのかもしれません。

ただ、その中身は年々深まっており、さらりと流れているようでそのようなものはありません。ひとつひとつの積み重ねにも意味があります。とても恐ろしくて「淡々と」などとは表現できません。

帰宅して、同じ秋山さんと東響のコンビで2016年12月に収録された「第九」を聴きながらこの原稿を作成しているのですが、おそらくあまりテンポは変わっていないはずなのに、9日の演奏のほうが遅く感じます。個々の演奏家はもしかすると2016年のCDのほうが上からもしれませんが、演奏から聴きとれる意味合いにはずいぶんと差を感じます。おそらく、秋山さんも見せ場をはっきりさせるよう年々工夫されており、ポイントごとに耳に残りやすいため、それが遅く感じている理由かもしれません。

「マイスタージンガー」も、その後の第九のすごさを予告して険しくかつ重厚です。

「マイスタージンガー」から休憩なしでさきに書いた第九につづき、そして定番の「蛍の光」で、終了です。

「第九と四季」時代は、アンコールの「蛍の光」は客席のお客さんも、がざごそとペンライト引っ張り出して灯しながら「ほーたーーるの、ひぃかーーーりー」といっしょに歌っていたものです。もう来年くらいは解禁して、秋山さんが客席のほうに振り返り「さあどうぞ」と合図する姿を見たいのですけどね……。

恥ずかしいのででかい声で歌いはしませんが、口ずさむうちに、優しくしんみりした心境になるものです。ただ、どうせやるなら9日ははやいですね。

仕事納めの前日くらいじゃないと、気分が乗らないというか……。