周囲の静かな反響
10月21日の日録 - 美風庵だより (hatenadiary.jp)
10月23日の日録 - 美風庵だより (hatenadiary.jp)
先日、負動産処分に口出しした話を書いたところ日記のアクセス数がぐんとあがって、リアル知人のみなさまから「謝礼もらえたならいいじゃないですか」と3人言われました(どれだけ読んでるんだ……)。
いや、そういう問題ではないのです。
すでにこの日記で何度も書いたことですが、私自身、曾祖父の相続問題が片付いておらず、塩漬け状態のまま放置され、約20年、実父と紛争がつづいています。曾祖父どころかすでに祖父も亡くなり、最初に遺産分割協議書を途中まで作ってくれた司法書士の先生も亡くなり、いまさら過去にさかのぼって全部やり直していたら、仕事どころではありません。
完全に、原爆級の負動産です。他人の世話を焼く段階では、まったくありません。
相続登記の義務化と罰則について|松谷司法書士事務所 (souzoku-sp.jp)
改正不動産登記法では、「相続人申告登記」という制度が新しく作られました。これは、不動産を相続した人が法務局の登記官に対し「私が不動産の相続人です」と申し出て登記してもらう制度です。
上記のとおり、改正法のもとでは、不動産の所有者となったことを知ってから基本的に3年以内に相続登記しなければなりませんが、遺産分割協議が終わっていないなどの事情により、相続登記をするのが難しいケースもあるでしょう。
そこで、先に「自分が相続人です」と法務局に申請することにより、上記の義務を履行したことにしてもらえるのが、相続人申告登記制度です。
相続登記の義務化といっても、しっかり逃げ道は準備されていますから、だらだらといつまでも終わらないのは目に見えています。
おそらく、期限を延長しつづけて、最後はどうにもならなくなるでしょう。
負動産所有者であることは隠すようなことでもないため、日記で書き、説明を求められればふつうに話してきました。そのため、どうも「負動産処理に詳しい」とおもわれたふしがあり、たまにどうするべきかお話をいただきます。
べつに負動産処理スキームといっても、とにかく現実を直視させ、子孫に負債をのこして死にたいかと脅すくらいしかありません。たとえば相続放棄の手続きがどうなっているかとか、かりに相続放棄をしても管理責任が残る話とか、負動産をのこされた子孫がいかに悲惨かを語ることになるのですが、その場で黙って理解できるひとはまずいません。
「詐欺師か!」とか「どっかの不動産屋とつるんで買い叩こうとしているのか!」と言われるのはザラですし、わめく、怒鳴る、聞きたくない現実のまえで、学歴職歴関係なく大暴れします。
なぜ、ここまでひどくなるのでしょうか。
固定資産税評価額というのが、私はいちばんの曲者だとにらんでいます。
固定資産税を課税するために「あなたの土地建物はいくらです」と価額を市区町村が勝手に決めたのが固定資産税評価額で、これ、実勢価格とはまったく関係がありません。
わたしより年配だとバブルの残党なので、若いころは固定資産税評価額より実勢価格が上回っていましたから、実勢価格が固定資産税評価額を下回るという感覚がありません。どんな土地でもあの金額で売れると、勘違いしてしまっています。
そして田舎の土地は極度に流通しないため、たまに売れるとその価格が独り歩きします。「県道沿いの○○さんの土地をコス○ス薬品の依頼で○○不動産が○億で買った」とか、そういう噂ばかりが先行して、近所だし、似たような単価で自分も売れるはずとおもいこんでしまうのです。
そして、住まなくなった子孫が売ろうとすると、捨て値の土地は不動産屋からも相手にしてもらえず、手じまいできなくなります。
私の近所でも、廃業した台湾料理店の跡地が売れるまで10年かかりましたし、むかし水資源公団の社宅があった土地も、10年以上塩漬けしてやっと売れました。私が住んでいるマンションの5階も、売れるのにいちど値下げしています。
それが田舎の現実です。
株も純金も、売ってはじめて税金がかかります。
しかし、不動産はもっているだけで市区町村の収奪の対象となります。国家と都道府県市区町村は裁判なしで税金の差し押さえができる特権をもっていますから、不動産を所持するということは、税金が払えなくなれば生かされるも殺されるも奴ら次第になる覚悟を決めなければなりません。
しかも、払えなくなったからといって土地を手放せばおわるわけではありません。
生活保護をもらっても、生活保護をもらうまえに滞納した税金はこつこつとられます(滞納処分停止後も自発的な納付は有効とされています←えぐい)。
第153条関係 滞納処分の停止の要件等|国税庁 (nta.go.jp)
(納付等)
11 滞納処分の停止をした場合において、滞納者が自発的にその停止に係る国税を納付したときにその納付金を収納し、又は過誤納金等若しくは交付要求(参加差押えを含む。)に係る受入金をその停止に係る国税に充てることは差し支えない。
たまたま今回成功したのは、久留米市近郊で800万だった土地が35万円でしか売れなかった例を引き合いに出した点でしょうか。「それはどこだ?」と相談者の父親が訊くので、その場所をgoogleマップで示すと、自分がいま住んでいる土地を買う前に、あちこち見に行った場所のひとつだったらしく、愕然としていました。いかなる説明よりも、じつはこれがいちばん効いたようにみえます。
それ以前から顔がイラついていましたが、このあと激高して大暴れしはじめたことをかんがえると、受け入れるべき現実をやっと理解し、ここで精神的に崩壊したのでしょう。
事実を認識し、あきらめさせる。
ここまでは他人が手伝うことができますが、これまで信じてきた価値が崩壊したあとの精神的ケアは、他人は踏み込むことができません。緩解(立ち直る)の作業は、けっきょく近しい者しかできないのです。
ハンコと印鑑登録証を取り上げることができた喜びで、割増しで謝金持ってきたり、私に白封筒渡したその場で買い手がつれてきた司法書士?に電話したりしている場合ではありません(気持ちはわかるけど)。
「お父さんどうされてます?」というと「コンビニにタバコを買いに部屋を出ていくことはあっても、かえったら部屋に直行で引きこもっているから放置している。メシも自分でどっかに食いに行っている。ほとんど口きいてません」ってニコニコしながら言うことじゃないでしょ?と、おもうわけです。
今日の日記をもし若いかたで目に留める機会があれば、はやいうちに以下の3点に取り組んでほしいとおもいます。
- 老後、田舎に戻る気はあるか。戻るならまず嫁や子孫の同意はえられそうか。
- 戻る戻らないにかかわりなく、実勢価格と、固定資産税額の把握。
- 戻らないなら、どれを残し、残りをどう整理するか。
いまは負動産について扱った本も多数あります。親と日ごろから話し合い、価値観が違いすぎて折り合うことができなければ、親の死亡後にどう動くかの準備をはやめにはじめてください。
親が終活に協力的なら、一緒に準備をするようにしてください。
いちばん悲惨なのは、葬式やらなにやらでジタバタしているうちに3か月がすぎ相続放棄という強力な選択肢を失うことです(3か月過ぎたら自動的に単純承認になります)。
むかしは「笑う相続人」といって、遠縁でほとんど会ったこともないひとから財産が転がり込んだ勝ち組もいたようですが、おそらくいま、それはないでしょう。
最近、仕事をつうじて知り合い話しかけられたかたは、「田舎の土地で誰ももらい手がなく、十数年前に会ったきりの叔母の土地が転がり込んできた」とのこと。病院の駐車場に貸しているため「固定資産税と競馬代にはなっている」とのことでしたが、たまたま借り手があったから、深手をおわずに済んだ幸運な事例です。
もういちど念を押しておきます。
これを読んでいる若い方で、もう田舎に戻る気がないなら、はやめに親御さんと話し、固定資産税評価額に惑わされず、「有料道路が開通すれば値上がりするかも?」といった期待を棄て、売れるチャンスがあればすぐに飛びつくことです。親御さんが死んでから遺産分割協議がからむと、役者が増え、話がむつかしくなります。
理想は、親御さんが生きているうちに、少しずつ処分することです。
金銭が兄弟姉妹でいちばん山分けしやすく、あとぐされがありません。
円安で現金の減価が気になるようであれば、兄弟姉妹で話し合い、米ドルMMFでも株でも、将来、換価・分割可能なものにすればいいのです。
むかしのように田舎で百姓をして、地べたに貼りついて生きる時代ではありません。仕事を求めて、転々とせざるを得ないのが、いまの日本です。
負動産関係の話がめんどうなのは、若い世代ほどカネがなく、固定資産税のカラクリも、田舎は不動産に流動性がないことも、相続放棄のカラクリも、まったく知らないことです。ある程度資産があり、年収もあれば、だらだら問題を先送りできますが、過去にみたケースのように親からうっかり相続した田舎の土地の固定資産税で派遣社員の給料差し押さえられては、シャレになりません。
日本国は金融教育が必要だ、NISAを学校で教えようとかぬかしてますが、こういう税金のカラクリや負動産処理については、ぜったいやりません(税金減りますからね)。
ホント、都合がいいというかふざけてます。
わたしより年配のバブル経験者も、少なくとも子供に「自分が死んだあと、この土地に毎年いくらかかる。墓と納骨堂の管理費にいくらかかる」と、経常経費の開示をお願いします。
親子でも金の話はしたことがないひとの、多いこと多いこと。
ほんらいの「終活」は、ここがスタートです。