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広島交響楽団 第442回定期演奏会「秋山和慶 指揮活動60周年記念」

第442回定期演奏会 | 広島交響楽団

広島交響楽団 第442回定期演奏会「秋山和慶 指揮活動60周年記念」
日時:2024年6月14日(金)18:45開演(17:45開場)
会場:広島文化学園HBGホール
[出演] 
指揮:秋山和慶
ピアノ:福間洸太朗
管弦楽:広島交響楽団
[曲目]
スヴェンセン:ノルウェー狂詩曲第4番 作品22
アッテルベリ(没後50周年):ピアノ協奏曲変ロ短調 作品37
(休憩)
アッテルベリ:交響曲第5番ニ短調 作品20「葬送交響曲」(日本初演)
[ソリストのアンコール曲]
シベリウス:10の小品 作品24 第9曲 ロマンス 変ニ長調
[オーケストラのアンコール曲]
スヴェンセン:2つのスウェーデン民謡 作品27 第1曲「すべて天空のもとに(命日に)」

先月、秋山先生の鎖骨骨折入院というマネージメント事務所の報告があり、どうなることかと思っていた演奏会でしたが、無事、秋山さんの回復された姿を拝見することができました。

この日とりあげられた3曲、どれも実演で聴いたことはありません。事前にyoutubeなどであらかじめ聴いてはみたものの、しょうじきいまいちピンとこないまま、今日を迎えてしまいました。

2 Swedish Folk-Melodies, Op. 27: No. 1 Allt under himmelens faste: Adagio - YouTube

2 Swedish Folk-Melodies, Op.27 (Svendsen, Johan) - IMSLP

※参考としてyoutubeの検索結果と、楽譜のリンクを貼っておきます。

この日のアンコール曲は、過去にいちど聴いたことがある「すべて天国のもとに」。

himmelとは天国や空のこと。天国に行く=空に還るというわけです。

秋山さんの指揮でしんみりして泣けてしまいます。もともと美しい曲ですが、立ちすくむ孤独感と、(一般的には両立しないはずの)どこか温かい雰囲気が漂います。

Kurt Atterberg (1887-1974) : Piano Concerto in B flat minor (1927-36) **MUST HEAR** - YouTube

※どういう曲かは聴いてもらうのがいちばんなので、参考にyoutubeで検索した結果を貼っておきます。

アッテルベリのピアノ協奏曲が終わり休憩に入ると、隣で聴いていた(たぶん)姉弟さんが「北欧っていうからもっと寂しい哀しいものかと思ったけど違うね。チャイコフスキーとラフマニノフとグリーグ足して映画音楽っぽいところもあるよね」「サンサーンスっぽさもある」と感想をくちにします。

今日のため事前に録音で聴いたとき感じたことそのままで、ああ、誰が聴いてもそう思うんだ、と自分の耳に安堵します。

ただ、実演で聴くと、録音で聴いたときほど切り貼り感はありません。作曲家があれこれ気にせず好きに書いてみたらこうなった、的な奔放さがあふれています。曲想はあっちに飛びこっちに飛び、天才が思いつくままぜんぶをぶち込んでみた感でいっぱいです。そして実演ならではのブラームスのピアノ協奏曲第1番にも似た、腰の座りっぷりも素晴らしい。

Kurt Atterberg - Symphony No. 5 "Sinfonia Funebre" (1922) - YouTube

※どういう曲かは聴いてもらうのがいちばんなので、参考にyoutubeで検索した結果を貼っておきます。

日本初演となったアッテルベリの交響曲第5番。プログラムによれば総譜の冒頭に「For each man kills the thing he loves」と、オスカー・ワイルドの「レディング監獄からのバラッド」の一文が記されているとのこと。

Each Man Kills The Thing He Loves
Yet each man kills the thing he loves
by each let this be heard,
some do it with a bitter look,
some with a flattering word,
the coward does it with a kiss,
the brave man with a sword!

人はそれぞれ愛するものを殺す
人はそれぞれ愛するものを殺すけれども
それぞれの人が、この言葉を聞こう、
ある者は苦い表情で
ある者はお世辞の言葉で、
臆病者はキスで
勇者は剣で!

DeepL Translate: The world's most accurate translator 

オスカー・ワイルドは晩年同性愛の罪で投獄され、出所後は世間から見向きもされず失意のうちに梅毒で亡くなります。録音だけ聴いていてもこういう情報はありませんから、会場で演奏会がはじまる前にプログラムノートをひらいて読み、そこではじめて気づきます。

むろんアッテルベリが「For each man kills the thing he loves(人はそれぞれ愛するものを殺す)」の一文を総譜に引用したからといって、曲をぜんぶワイルドに結びつけるのは野暮なのですが、少なくとも不安さとそれを克服しようとする意志はただごとではありません。

不意に挿入されるどこかふざけ気味のどんちゃん騒ぎなワルツと、やがて息絶えていく結末。次第にせかされ強制されていくさまは、ショスタコーヴィチの5番を先取りしています。違うのはショスタコはまがりなりにも歓喜で終わりますが、こちらはピチカート。力尽きるのです。チャイコフスキーの「悲愴」と比較した文章をホームページで散見しますが、ああいう消え入る終わり方ではありません。

ピチカートで、意思を持ってこと切れます。

なにやらいろいろと考えさせられる曲でした。

Kurt Atterberg - Symphony No. 5 "Sinfonia Funebre" (1922) - YouTube

しかし、終わりがけのワルツ、頭にこびりつきますね……これ。

コンサート情報 | 東京交響楽団 TOKYO SYMPHONY ORCHESTRA

東京交響楽団 第724回 定期演奏会
日時:2024年9月21日(土)18:00開演(開場  :  )
会場:サントリーホール
[出演] 
指揮:秋山和慶
ヴァイオリン:竹澤恭子
管弦楽:東京交響楽団
[曲目]
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
ブルックナー:交響曲 第4番 変ホ長調 「ロマンティック」WAB 104

次回はおそらく9月の東響定期ということになろうかと思います。

19日の中部フィル定期、入場券だけ買って準備しておきましたが、さすがに平日の水木に休みをもらって名古屋行は、厳しいです。残念でした。

こんどは9月分の飛行機代稼がないとですね……。