松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

2023年6月3日の日録

国産メーカーの凋落か、国の没落か。

シニア向けの「らくらくホン」などを手がけるスマートフォンメーカー、FCNTが5月30日、民事再生法の適用を申請した。帝国データバンクによると、適用を申請したのはFCNTの親会社を含めたグループ計3社で、負債総額は約1200億円に上るという。
富士通のモバイルフォン事業本部から2018年に分離独立した同社は、らくらくホンのほか、高付加価値製品ブランド「arrows」でも知られる。直近まで通常の営業を行なっており、業界関係者の間でも、突然の発表に驚きを隠せない人が多かった。
2022年3月から始まった急激な円安とその定着、スマートフォン市場の成熟化といった背景もあり、収支改善の道筋をつけることができなかったものとみられる。

「らくらくホン」のスマホメーカー突如破綻の深層 急激な円安が打撃、残る日本勢は2社のみに | IT・電機・半導体・部品 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

この書きかたからすると、世界市場で勝つ競争力がない国産携帯電話は、事実上携帯電話会社の優遇策でなんとか生き延びていたのに、総務省がハシゴをはずしたせいでとうとう国内ですら売れなくなり、撤退やお父さんに追い込まれていると読めます。
まぁ、世界市場で勝てない時点でダメという話という意見もとうぜんあろうかとおもいますが、「らくらくホン」をはじめ、ガラケーから移行するかた向けの完全日本語対応型初心者向けスマホ需要はとうぜん今後もあるわけで、そういう部分はどうなるのかな?という気はします。
まぁ、いまの媚米・従米路線まっしぐらの日本国に国産メーカー優遇政策をとれというのも無理難題でしかないわけで、メーカーを守れない国であることが、この事例であきらかになった、とかんがえておくべきでしょう。

 

どこまで求めるか。

いまのご時世、可能なかぎり間近で参拝したいというのは人情ですから、たいていどこのお宮さんもバリアフリー化を頑張っておられます。町内会で管理している天満宮も、車いす用スロープをつけたり、さすがに駐車場はありませんが(というか道路拡幅工事で用地をけずられ、もう土地がない)、それなりにこつこつ投資はしています。

ただ、どこまでやるか、限界はあるでしょう。

各地をまわると、威厳をたもつため、敷地にわざと高低差をつけてデカくみえるよう配慮したり、妙に天井高が高いので不思議におもっていたら、敷地外からみると「浮いている」ように見えて格好良かったり、こう言ってはなんですが、神社様式というのは威厳と見た目のためにバリアフリーを軽視して成り立っている要素が多分にあるからです。

もし、純粋なバリアフリーなら、平屋の土間敷車いす対応のどっかの公共施設みたいなデザインにならざるをえず、その建物に神性が感じられるか、また、そこに神様が下ってくるものなのか、疑問があります。

大きな神社になると、高低差がきついかたのための「遥拝所」として参道わきにちょっとした祠やお宮があり、そういう答えかたもあるとおもいます。そもそも、勧請された各地の分社はリモート参拝のさきがけなわけで、身体面のバリアフリー化ではなく、経済的なバリアフリー化を目指したものとも言えるでしょう。

神社様式といっても権現造の寺とかとちゃんぽん系のものから伊勢の神宮みたいなのとかいろいろありますし、今後、スーパーバリアフリーめざしてどこまでも高低差のない平屋づくりな新しい様式をつくっちゃいけない、ということはないのですが、そもそも建物だけバリアフリーにしてみても、そこに至る参道とかの問題があります。

常在の神職にとっては仕事場であり家であっても、われわれ一般人にとっては非日常を体感する祭祀場であり、あまりに「家」や「公共施設」並になって非日常性がなくなったとき、それがどう私たちの心理に影響するかもかんがえなくてはなりません。