松村かえるの「かえるのねどこ」

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QUARTET AMABILE演奏会

カルテット・アマービレ福岡公演|クワルテットフォーラム福岡|note

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QUARTET AMABILE演奏会
日時:2023年1月26日(木)19:00開演 18:30開場
会場:あいれふホール (福岡市健康つくりセンター10F)
[出演] 
カルテットアマービレ (篠原悠那/北田千尋/中恵菜/笹沼樹)
[曲目]
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第2番ト長調op.18-2
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第9番 ハ長調 作品59-3

※休憩

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品130(第1楽章~第5楽章)
ベートーヴェン:《大フーガ》変ロ長調 作品133

※笹沼さんスピーチ

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品130(第6楽章)
当日は、初演時の終楽章である「大フーガ」を6楽章目に演奏。
スピーチ後、あらためてベートーヴェンが作り直した第6楽章を演奏。

昨年11月の「バッハ 無伴奏チェロ組曲全曲演奏会」につづき、笹沼さんが出演するということで、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴きに行きました。

会場はあいれふホール。福岡市健康づくりセンター(保健所や検診会場などが入居)という建物の最上階です。もともと音響面に配慮した300席ほどの小規模ホールが少ないことと会場使用料の安さもあって、人気があります(というより、あいかわらず都心部ではここしか選択肢ないかも?)。室内楽の会場はだいたいここか、ここが借りれなければ900席の西南学院のチャペルか、700席の福銀本店大ホール(FFGホール)という印象です。ただ、西南学院は大学のスケジュール最優先ですし、福銀本店大ホールはカネが高いし階段おおいしで、敬遠される印象があります。これ、まだ若いころの話ですが、たぶん現在も状況は変わらないはずです。

さて、ひさしぶりのあいれふホールです。このはてなブログ(はてなダイアリー)、2008年から書いているのですが「あいれふ」で検索しても出てきません。なんと14、5年は御無沙汰ということです。我ながら驚きました。

演奏されるのはベートーヴェンの弦楽四重奏曲3曲。2時間超えるなとおもっていたら主催者側から「終演は21時15分予定です」とアナウンスがあります。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は有名ですが言うほど聴きこんできたわけでもなく、なんせこの演奏会のためにハンガリー弦楽四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集を引っ張り出し(50年以上むかしのモノラル録音です)、IMSLPで楽譜をダウンロードして突き合わせる(たとえば「大フーガ」とか)程度のことしかやっていません。

その程度のレベルで余計なことを書くと笑われそうですが、晩年になればなるほど、楽器4つでここまで出るか!やれるか!と驚く世界がひろがります。媒体が弦楽四重奏というだけで、作曲家の頭のなかには管弦楽フル動員の交響曲同様の世界がひろがっていたことがわかります

森本 隼太/ラヴェル:組曲「鏡」より「道化師の朝の歌」(入賞者ガラコンサート)Ravel: "Alborada del gracioso" (from the Suite "Miroirs") - YouTube

Ravel: Alborada del gracioso, Ormandy & PhiladelphiaO (1958) ラヴェル 道化師の朝の歌 オーマンディ - YouTube

たとえばすぐyoutubeですぐひろえる例としてラヴェルの「道化師の朝の歌」があります。原曲(ピアノ版は1906年初演)も管弦楽版(1918年初演)もともに有名です。音響が豪華になることで作曲家のイメージが伝わりやすくなっているだけで、おおもとに変化はありません(厳密にいえば管弦楽版には木管が吹く追加があります)。

逆にいえば、後年に生きる我々は、作曲家が同じ曲を違う媒体にあれこれ編曲した事例を知っているから、(注文を受けた媒体にあわせず)さきに発想があるという考えに思い至るわけで、こういう曲への構え方に気づかなければ「やたら難しい曲」「とっつきにくい曲」と受け取られてもしかたはなかったでしょう。

前半よりも後半、とくに「大フーガ」のすごさを実演で聴けただけでも、ありがたい演奏会でした。

しかし、大フーガの鬼気迫る世界というか、目のまえに居るのは4人なのに聞こえてくるイメージのふくらみはそれ以上の演奏を聴いた後で、ベートーヴェンが書き直した「第13番」の第6楽章を聴くと、妙にかるくおもえるのも事実。

まぁ天下のベートーヴェンでも、ある程度は客を意識せざるをえなかったということでしょうか。