松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

「農協月へ行く」


先日、小倉まで高速バスを利用したのですが、その車中で久しぶりに読み返しました。
表題作の「農協月へ行く」や、映画化もされた「日本以外全部沈没」より、赤貧のおすすめは「経理課長の放送」です。
ラジオ局のストライキで現場スタッフがだれも居ないなか、社長命令で管理職が手分けして放送をするドタバタ劇。アナウンサーの代わりを務めるのは経理課長で、営業部長はレコードを落として割るわ、CMは逆回転させるわ、人事課長は放送機器の電源を入れておらず1時間無音にしてしまうわ、やりたい放題。ピケを張られて水が持ち込めないため、社長が差し入れたのはなんと一升瓶。下戸の経理課長さん、れろれろで放送を続けます。
最後、ストライキ中の組合員がスタジオになだれ込むところまで、一気に読ませます。
考えてみればこういう作品があって、のちの「残像に口紅を」や「虚人たち」があるわけで、貴重な原点ともいえるでしょう。
引用しても信じてもらえない可能性があるので、わざとiPhoneの画面をキャプチャしました。こんな文章が延々と続きます。
気になる方は是非お買い求めください。