松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

中部フィルハーモニー交響楽団 第88回定期演奏会「北欧シリーズ vol.2」

第88回定期演奏会 NAGOYAシリーズ2 | コンサート | 中部フィルハーモニー交響楽団

中部フィルハーモニー交響楽団 第88回定期演奏会「北欧シリーズ vol.2」
日時:2023年7月15日(土)15:00開演(開場14:00)
会場:三井住友海上しらかわホール

[出演] 

指揮:秋山和慶
管弦楽:中部フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:北川千紗

[曲目]

スヴェンセン:ノルウェー狂詩曲第3番作品21
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47
シベリウス:交響曲第3番ハ長調作品52

[ソリストのアンコール]

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ラルゴ

批判する意図はないのですがどう読まれるかわからないため、いろいろ表現をかんがえているうちにどうも文章がすっきりしません。

すっきりしないまま文章を書くことをお許しください。

私が座っている場所から、お子さん連れが2組みえました。

どのくらいの齢なのかなぁ、などとおもいつつ、ちらちらとながめます。

私がクラシック音楽、正確にはオーケストラ演奏というべきものに触れたきっかけは、日曜日朝の「題名のない音楽会」でした。小学生のころです。

黛敏郎さんが司会をされ、秋山さんや岩城さんが指揮する東響が出演していました。これ、そもそものきっかけは「ドラえもん」の放映後に「題名のない~」をやっており、そのままチャンネルを変えずにじっと画面をながめていたにすぎません。

名前もわからぬ楽器があって、棒を振り回したらなんの合図かわからないけれど、音が出る。数十人による大合奏。いろいろな音のせめぎあい。

これはどうしたらこうなるのか?とわくわくしてながめていました。

その姿をみて、音楽に興味があるとおもったのか、祖父が他村の小学校で不要になったリードオルガンの払い下げをうけ、我が家に初の楽器がやってきました。まったく音楽とは無縁の家で、リードオルガンで見よう見まねで楽譜をみながら、音であそぶ生活がはじまったきっかけでした。

「こいつは物好き」と祖父が叔父に言い、オーケストラの演奏会にはじめて連れていかれたのが小学校のころだったかとおもいます。すでに小学校合同の音楽教室で、テレビでしかみたことがなかったオーケストラの実物はみていましたが、やはり舞台のうえにあり、本格的なプログラムの演奏会は、刺激的だったのをおぼえています。

自分の経験から言って、子供のころから本物を聴かせたいという親心はほんとうにありがたいものだし、子供にとっても財産になるとおもいます。ただ、いまはyoutubeなどで曲そのものには簡単に触れることができるわけですから、いくら生演奏そのものに触れさせるのが貴重な経験だと言っても、せめてどういう曲かはとおしで聴かせて、起承転結の枠を予習させてあげればいいのにな、ともおもうのです。

私が子供のころは、いまのようにかんたんにyoutubeなどで音源がひろえる時代ではありません。レコードかCDを購入するか、事前にエアチェックしたカセットテープが頼りでした。見知らぬ曲をいきなり聴いて、聴いた当初はとらえどころがわからず頭痛がして帰ったことは何度もあります。「火の鳥」しかり、「サロメ」しかり、ブラ4しかり……。いまはどれも好きな曲ですが、最初はまったくわかりませんでした。

事前に聴いていれば、事故の危険性は減ります。ありがたい時代です。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲をすでに何度も実演で聴いています。今回の北川さんの演奏はそのなかでもじつに刺激的なものでした。

ただ、やはり庄司紗矢香さんの登場以降、若手演奏家によくみられるようになってきた、内面を重視し内省的に音をぎっちり詰め込んでいくスタイルで、子供にはきつかったかな?という気はします。子供さんが前の座席を足でけり上げてしまい、ホールスタッフのかたが前の座席のかたに謝罪されているのをみて、ふとおもいます。

私が若いころは、シベリウスのヴァイオリン協奏曲はたいていチャイコフスキーと2曲セットで収録されている、どちらかといえば通俗名曲くらいの扱いでした。ミルシテインにしてもオイストラフにしてもグリュミオーにしてもメロディー重視の演奏でしたから、曲の起承転結というか枠の勉強はしやすかったかとおもいます。

 

この日のメインはなんといっても「交響曲第3番」でしょう。ほぼ間違いなく実演で聴くのははじめてです。

Symphony No.3, Op.52 (Sibelius, Jean) - IMSLP: Free Sheet Music PDF Download

このあたりから「実質第4楽章」とかコラール主題とか言われるものがはじまります。シベリウス自身は「混沌から明確化へ」といったコメントをのこしているそうですが、この部分をさらりと終わらせる演奏がおおいなか、しっかりと足踏みして雄大に描いていくため、自然への賛歌に聞こえてきます。これまで触れた録音とはべつの曲を聴いているかのような錯覚すらおぼえます。これはなかなかの鳥肌モノです。

Symphony No.3, Op.52 (Sibelius, Jean) - IMSLP: Free Sheet Music PDF Download

遅めのテンポでしっかり足踏みして盛り上げるから、最後のあっさりした終結が決まります。あっさりどころか充実した響きです。

なんともいえぬとらえどころのない曲だとばかりおもっていましたが、まったくもってそんなことはありません。2番・3番・5番(4番は癌の恐怖からくる異質な響きがおおく、いったん除外します)をつなぐ線が、すこしみえた気がしました。

秋山さんと中部フィルのみなさんに感謝です。