美風庵だより

幻の花散りぬ一輪冬日の中

「恋人たち」「はましぎ」

 

 「恋人たち」と「はましぎ」を久しぶりに読み返しています。昭和40年ごろの無頼派とでもいうべき小説が幅を利かせていた時代の作品ですので、今の尺度で考えるととにかくだるい展開が多く感じます。
筋書ではなく、登場する道太郎、六、倫太郎のそれぞれの人物像のかっこよさで持っている作品と言っても過言ではないでしょう。この3人の無頼な暮らしを読んで、人物を味わう作品です。
ただ、女性はどれもいけすかない……。
唯一見られるのが道太郎の妻の信子くらいでしょうか。後年の「残りの雪」の里子みたいなすごい女性は、まだ、彼のなかには存在していなかったでしょう。そういう意味では、立原本人が言うとおり「習作」だったのかもしれません。

あとこの第2巻には「鎌倉夫人」が収録されています。さいきん某流行作家(故人)の作品を読み返す機会がありました。二股三股かけてなにが悪いと開き直りすぎた男性主人公の姿は、はるかに立原の描く男性には及ばなかった気がします。

少々だらけきった作品に浸かりすぎたせいか、立原の作品世界がいかにすごいものだったか、あらためて実感してしまいました。