松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

ほっこり

昨夜、文具店で筆を選んでゐたら、客と店員(ともに20代後半?)の會話にほつこりと云ふ言葉が出て違和感を感じたので、書く。
まづ、辭書の語釋を掲載する。

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ほっこり
 
1〔副〕
a いかにも暖かそうなさまを表す語。*伎・いとなみ六方「なかはほっこりとあたたかで」
b ふくよかなさま。また、ふかしいもなどのふっくらとして柔らかいさまを表す語。*咄・軽口大黒柱‐四「薩摩芋のほっこりじゃ有った」
c 色つやがよく明るいさまを表す語。*俳・新増犬筑波‐油糟「ほっこりと洗ふたやうな月の戞(かほ)」
d 気持が晴れて、すっきりとしたさまを表す語。*伎・桑名屋徳蔵入船物語‐二「一体ほっこりともせぬ金の取り様ぢゃ」
e うんざりしたり、困り果てたりするさまを表す語。*浮・諸芸独自慢‐二「イヤモ世話なもので、ほっこり致しました」
2ふかした薩摩芋をいう。*滑・膝栗毛‐八「ほっこり買ふて」
Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)小学館 1988

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40過ぎていまだに「ほつこり」と云ふ言葉に慣れない。
もともと、ほつこりと云ふのは京都言葉で氣疲れを表す言葉で、小説の會話文などで見かけることはあつても、それ以外でまづ、九州で目にする耳にすると云ふことはなかつたのだ(1-e)。
やがてもう少し齢をとつてから、どうも「ほくほく」の聯想からか、大阪あたりでは燒き芋をほつこりと稱してゐると云ふことに氣づいた(2)。
この數年、更に(2)から滲透して、いろんなところで聞くやうに成つたのだが、いまだにギョッとするときがある。まあ、大辭林第3版は(1-a)と(2)しか載つてゐないので、一般的にはさう云ふ理解が常識に成つてゐるのかも知れぬが。