松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

2024年10月28日(月)の日録。

こんどの衆院選の結果はかなり深刻かもしれません。

私は今度の衆院選で自公過半数割れをまったく想定もしていませんでした。

そもそも2009年の政権交代選挙のときのような、リーマンショック不況のうらみつらみを抱えて投票所にぶつけに行く、ああいう熱気が有権者のどこにもありません。期日前投票所で顔見知りに会っても義務だから来た、といったしらけ切った感じしかありませんでした。

ご承知のとおり地方と都会には「1票の格差」問題があります。都会の有権者より地方が優先され続けるかぎり「地元にカネを引っ張ってこれる政治家が良い政治家」という地方の論理も優先します。これがあるから地方に支えられ与党自民党が強かったわけです。

もし地方も都会もみな同じ扱いとなり、利権誘導で盤石な基盤を築いてきた地方票を削って都市部に付け替えたら、地方も自民党もさらに崩壊していくでしょう。そして選挙区をどんどん統合再編していけば、カネを盗ってくる使命をおびて地元から国会に送り出された面々一人ひとりの権力は増大します。特定人物への依存はますます激しくなり、それじたいが「世襲」の温床となります。

地方のあちこちでみられる「与党自民党にあらざれば政治家にあらず」の完成です。

福岡を例にとると、民間資本が参入し彼らが主体で動く余裕があり、政治家からカネを盗ってきてもらわないと生きていけない有権者の割合が低い政令市の中心部(とその近郊都市)は、野党が1位です。しかし、ほかは自民党がつよいことが判ります。これが地方の実態です。なお、11区で維新が勝ったのはいずれ触れる事情が別にあります。たぶん面白いことになるので注目しましょう。

自公で過半数割れといってもあと18あればいいわけで、まず、非公認のみなさんと自民党で統一会派を組み、あとは馬◎やたま◎んのところから一本釣りすればなんとでもなります。しょうじきなところ与党の政治家に鞍替えしたくて仕方がない、おらが村の先生には与党代議士になってほしい有権者は、掃いて捨てるほど居るからです。

2009年の政権交代選挙のように150台まで落ち込めばもう手の施しようはありませんが、18くらいなら1996年の衆院選後、新進党切り崩してどんどん復党させたときのことが参考になるはずです。そもそもゲル自身がそのとき小沢一郎先生とお別れして自民党に復党したかたですから、とうめんとるべき戦術は判っておられるのではないでしょうか?

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

どこのマスゴミもT橋大先生も触れないので不気味ですらありますが、今度の選挙でいちばんの争点は、裏金問題ではありません。

円安と物価上昇です。

外国のニュースに触れると、インフレ抑制に失敗して与党が大苦戦とか、野党に負けたという報道はくさるほどあります。

日本でも2020年と比較して約2割、食料の値段があがっています。政府統計が信用ならない見たくないというならそれでも構いませんが、食い物も燃料もほぼ輸入に頼りきりの国で円安政策をやればどうなるか。その結果です。

食い物の値段が2割あがったなら、4年前と比較して給料や年金も2割アップしたひとが、どのくらいいるでしょうか?私のような下請け孫請けの人生負け組は契約更新時に委託料なんてほとんどあがっていませんし、「働かない」「働けない」「働く気がない」年金ジジババ層も、物価高の影響をもろにかぶります。

生活が苦しくなった人のほうが多いから、与党は批判され、野党に票が流れます。

裏金だろうとなんだろうと、食わせてくれる、地元にカネを引っ張ってきてくれる、そういう政治家なら、有権者は誠意をもって投票で応えます。なぜ選挙で当選したら「禊が済んだ」と言うか。「マスゴミはあれこれ書き立てているが、関係ない。我々はお前の罪に目をつむり免罪するからこれまでどおり働いてくれ」というのは、信じられないひともいるでしょうが、政治家と支持者の最高の関係なのです。

むろん、盗用多をはじめとする大企業、企業経営者、資本家(投資家・投機家)の皆さんにとっては円安こそ正義です。円安をありがたがらない人間が居ることじたい、信じられないかもしれません。しかし、世のなか全員が円安で恩恵をうける立場ではありません。だから、円安とそれによる物価上昇、とくに食い物の値上がりが、政権には致命傷になります。

いま、否応なくきづくのは、分断です。

アメリカの選挙をみると、共和党と民主党それぞれの支持者が互いをののしりあう分断社会だとつくづく感じます。このままいくといずれ日本もそうなるんだろうなぁ、と思っていたら、まさかまさか、こんなに早く時計が進むとは思ってもみませんでした。

そして、重要なポイントをもう一点。

「若者からこれ以上社会保険料を盗るな。足でまといが自分で自分を召すための法整備が必要だ」という主張をした政党の議席が4倍に増えました。年金ジジババ層や税金から事実上のお給料をもらっている人たちが自らこういう主張を支持するわけはありませんから、ほぼ、盗られて苦しんでいる、他人のせいで自分の未来がつぶされていると感じている層の共感でしょう。とうとう国政政党が堂々と世代対立を煽り、片方の味方につく時代になりました。はっきりと時代は変わりつつあります。

さらに「れいわ」こと、メロQの党も議席3倍に伸びました。ここも一時期、税金は盗れるところから盗り、カネを刷って刷って刷りまくれと主張していましたから、そういう主張が無視できない数の議席を得たというのも、注目せねばなりません。

岸田文雄がどうとかゲルだから負けたとか、じつはそういう問題ではないことがわかります。円安こそ大正解路線をとるかぎり、かりにT市が総理総裁になったとしても、主要支持層である企業経営者、資本家(投資家・投機家)以外の支持が得られるかどうかは、不透明です。

もし分断が存在するという仮説が正しければ、与党は「円安こそ正義」路線を修正して過半数獲得を目指さないといけなくなります。それは自民党の主要支持層である経営者や資本家にとってうれしい選択ではありません。

貧乏人に配慮した「経済オンチのたわごと」を丸呑みする可能性すらあります。

どうなるでしょうね。

それにしても、まさかこんなに一気に時計が進むとは思ってもみませんでした。

今回の結果なら、自民党の主要支持層(企業経営者・資本家(投資家・投機家))的には、ゲルを引きずりおろして反アベベを逆に排除、T市か萩◎田でアベノミクス続行という皮算用も描けそうです。

Rethinking Japan - The New York Times

ただ、2015年の時点で思ったとおりの効果がないと親分クルーグマンが撤退を表明して10年。考えついたひとが白旗上げて逃げた話に、はたしていつまで日銀をぶん殴ってしがみつけるか……。

少々長くなりましたが、コロナ流行前はデフレ脱却と表向きは言いつつもカネを刷れるだけ刷ってデフレを維持し、末端が食うに困る状況だけは避けつづけました。これがアベノミクスと好景気の中身で、モリカケをいくら野党が騒ぎ立てても自民党が勝ち続けた理由もここにあります。

ちゃんとメシを食わせきれない連中に義理立てなんか誰もしません。

今度の選挙の負けっぷりをみて、まさか自民党のスタッフすら裏金で負けたと本気で思ってないか?ほんとうに立て直せるのか?という気がしてきました。

もしそうなら、夏の参院選で今度こそとどめを刺されるでしょう。

 

28日の記録。

開票速報をだらだら眺めてもしかたがありません。高良山登山の記録を書いたら風呂に入り、寝ました。夜中の2時に起床して、決着がついたあとの結果を眺めて、わが目を疑います。

そのあと二度寝して、今朝は袋めんを朝食にいただきました。まぁ、政治がどうなろうと私にはかかわりがないことですし、いままでどおり貧乏に耐え忍びながら、田舎のかたすみで生きながらえるほかありません。