先日、松田華音さん独奏、井上道義さん指揮NHK交響楽団による伊福部昭さんの「リトミカ・オスティナータ」を紹介しました。
この日の演奏会の最終曲目がこの「日本狂詩曲」だったわけです。
久しぶりに聴いていろいろ考えることもあるのですが、どうもこちらより「ピアノ組曲」のほうが聴きたくなります。
1933年の「ピアノ組曲」は、伊福部さん19歳のときの作品。これを1991年に自ら管弦楽に編曲したのが「日本組曲」です。のちに、本人編曲の弦楽オーケストラ版や二十五弦筝(=琴)版も出ました。
管弦楽版は、1991年に井上道義さん指揮の新日本フィルで初演されました。初演指揮者が学生オーケストラを指揮した演奏です。
この「日本組曲(ピアノ組曲)」でいちばん好きなのは、一曲目の「盆踊」です。聴き比べるとわかるとおり、やっぱり管弦楽編曲のほうが豊かに鳴り響きます。
むろん、ピアノの原曲も丁寧に聴けば表現で劣るものではないのですが、脳内であれこれ考えなくても管弦楽は答えを目の前で演奏してくれるから、ラクなのです。このあたり、モーリス・ラヴェルのピアノ曲とその管弦楽編曲版と同様と言えます。「道化師の朝の歌」とかね。
https://youtu.be/XYCspgVhsW0?t=192
https://youtu.be/KLj5J4r26QE?t=212
やっぱり伊福部さんってすごいと感じるのは、管弦楽版におけるこのトロンボーンの使いっぷりです。
伊福部昭 管絃楽のための 日本組曲 (21ST CENTURY SERIOUS CONTEMPOR)
初めて楽譜を見たのはこの評論集に掲載された「譜例」で、ぜひとも実物が見たいとながねん思っていたところ、やっとこ手に入れたのは、その10年後でした。
管弦楽版のトロンボーンづかいとそのどっしりとした量感が曲想をさらにわかりやすく豊かにするのを聴いてしまうと、原曲含めてほかの編曲が物足らなく感じてしまいます。贅沢ですが。
youtu.be同じ1991年に、二面の二十五弦筝のための編曲も行われています。二十五弦筝というのは、普通の琴が13本の弦なのに対して25本の弦を張ることで、音域を広げたものと考えてよいでしょう。
この演奏をされた野坂恵子さんは、2019年にお亡くなりになられました。
生きているうちに、演奏会にもっと足を運んでおきたかったですね……。
最後は1998年に初演された弦楽オーケストラ版です。
以上、原曲と本人が編曲したもののほか、どうも吹奏楽版もあるようですが、未聴なのでなんとも言えません。
石井眞木/伊福部昭: ラウダ・コンチェルタータ, 他 - 傘寿記念シリーズ<タワーレコード限定>
こちらは元々1996年にユーメックスという東芝出資の企業が発売しその後廃盤になっていたものを、2012年にタワーレコードが再発したもので、小林研一郎さんが指揮した「日本組曲」が収録されています。むかしはコバケンが力みすぎている印象があって好きではなかったのですが、感情に任せて突っ走ろうとするのも、これはこれで面白いと思えるようになってきました。