生活困窮者です。
前の仕事場で20年公務員をやっていました。出世に縁のない末端職員でしたし、このまま残ってもいずれ退職勧奨で肩たたきの運命ではあったのですが、それなりには頑張っていたつもりでした。
風向きが変わったのは、執行部が入れ替わってからです。のちに議会の同意を経て実質最高指導者となった男が、当時の人事部署の長に異動リストを持ち込み「この通り人事異動をやれ」と(まだ議会同意前で彼の上司でもないのに)「指示」した件がありました。その前後、当時現職だった或る三役の一人をこの男とその一味が取り囲んで「後任はもう決めたから」と進退伺をむしり上げる事件もあり(いずれ自分も吊るしあげられるのだろう。怖いなぁ)とは考えていました。
その状況は比較的早く訪れ、その実質最高指導者からほかの職員の前で面罵されたり書類の押印拒否されたりとなかなかの目に遭い、辛抱して仕えるのも馬鹿らしく思え、2017年3月をもって退職しました。
当時、裁判でもなんでもやってやると息巻いていたのですが、退職金や宝くじ系の臨時収入があり、当面食いつなげる資金が手元にあるのに気づくと、どうでもよくなりました。退職後2名ほど「中途退職するより最後まで辛抱したほうがたっぷり退職金もらえたのに(馬鹿だね)」と上から目線でわざわざ電話されてきた方々もおられましたが、風聞ではその方々も精神的に病んで仕事を休んだりされたようです。
考えてみれば、彼らは連中の毒を(生活困窮者が在職中のように)経験したことはないはずで、なににうんざりして退職したか、あとで実感されたのだと思います。
そんな公務員生活だったわけですが、地方公共団体の合理化や電子化については、退職する前からずいぶんと議論がなされていました。末端行政のすみっコぐらし窓際族でそこまで実感することはなかったものの、たまには上級官庁のお誘いで上級国家公務員様が登壇する講演会などに参加させていただくことがあり、いろいろ勉強させていただきました。
上級国家公務員様が、マイナンバーの動向などについて講演をすると、とにかく「地方公務員200万人は多すぎる」「合理化しなければ国の財政がもたない」「マイナンバーをきっかけにさらなる合理化を」「地方公共団体の自発的努力は期待できない」といった内容を異口同音で主張します。それにうんざりしつつも「今のままやっていけるのもあと10年くらい?」と感じたものでした。
お上の動向を知って、いずれ国鉄、郵便局、社保庁と同じ扱いになる、やがてくる混乱のなかしがみつく世界でもないと諦めたのも、振り返れば退職を決めた一因かもしれません。
自治体システム、乱立に歯止め 仕様統一へ国が新法: 日本経済新聞
政府は約1700に上る地方自治体の情報システムについて仕様を統一する。2025年度までの実現を義務付ける新法を定め、予算を基金で積む。「地方自治」で各自治体が独自に構築した結果、連携ができずに非効率を招いている。新型コロナウイルス禍で行政対応の問題が露呈した。とはいえ官民が築いた既得権の壁は高く、看板倒れになる懸念もある。
2025年を目途にシステム標準化することを国が法制化することになり、だいぶ形がみえてきました。要はこれ、ナショナル・ミニマムを実現するために、古い言い方でいえば機関委任事務として各市区町村にやらせていたことを、事実上直轄化するための布石です。
市区町村の基幹システム標準化がすすめば、職員の事務手続きに対する対応もすべて全国規模でナレッジベース化されますから、人員の流動配置が可能となります。全国同じように事務手続きが進められるようになり、ボリュームが増えれば、RPAなどの導入効果も見えやすくなります。おそらくそうなってくれば、地方公共団体窓口法人といった名称で、窓口部分が外注されることになるはずです。また、収納金や滞納を管理するシステムも標準化され、各市区町村ごとに銀行(指定金融機関)をつうじて住民が納付した税金や料金を処理するのではなく、全国統一基準で一斉に処理することも可能です。
これはすでに「地方税共通納税システム」という名称で一部実現しています。今後、さらに拡充されていくはずです。
標準システム化が進めば、上級官庁への報告書のたぐいも統一されることになるため、各市区町村は処理を流して結果を上級官庁に送信すれば終わるようになります。
システムから出力した数字などを見ながら、転記したりする必要はありません。
では、市区町村に残る仕事はなんでしょうか。
ナショナル・ミニマムで国が直轄化するもの以外が、残ります。
おそらく中長期的には、自治会や町内会といった地域の自治コミュニティに収れんされていく部分と、国や県の出先としての部分に分かれていくことでしょう。つまり、徹底して地域密着でないといけない仕事と、全国統一サービスの仕事が、二極化していくということです。
いまはその過渡期で、あと数年もすれば、答えが見えてくると思います。
確実に言えるのは、二極化のいずれにぶら下がっても地方初級公務員は末端労働者に固定されるということです。
市区町村の中途半端な管理部署にぶら下がっている皆さんが、真っ先に不要になります。まだ天下りできる外部団体があるところは、幸せでしょうけどね……。