松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

東京交響楽団 第724回 定期演奏会《秋山和慶指揮者生活60周年記念》

第724回 定期演奏会 - 東京交響楽団 TOKYO SYMPHONY ORCHESTRA

東京交響楽団 第724回 定期演奏会《秋山和慶指揮者生活60周年記念》
日時:2024年9月21日(土)18:00開演(開場17:30)
会場:サントリーホール
[出演] 
指揮:秋山和慶
ヴァイオリン:竹澤恭子
管弦楽:東京交響楽団
[曲目]
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
ブルックナー:交響曲 第4番 変ホ長調 「ロマンティック」WAB 104
[ソリストのアンコール曲]
バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番イ短調 BWV1003から「アンダンテ」

最後にサントリーホールを訪れたのが2018年12月29日でした。約6年ぶりの再訪です。

この日記を検索しても、ベルクのヴァイオリン協奏曲の実演を聴いた感想はありません。2008年よりも前のはずで、最低でも15年は経っています。

ブルックナーの「ロマンティック」も意外と実演に触れておらず、2012年が最後だったりします。そのときは飯森範親さんの指揮でした。

www.youtube.com

Anton Bruckner: Sinfonie Nr. 4 mit Günter Wand (1990) | NDR Elbphilharmonie Orchester (youtube.com)

楽譜の何小節目とか練習番号を書いても伝わりにくいので敢えてyoutubeを引用しますが、「ロマンティック」の終楽章の最後、秋山さんと東響ごと舞台に吸い込まれるような錯覚すらおぼえます。

まず第1楽章のはじまり、夜明けから太陽が昇りはじめる場面は目をつむっているとどこか遠い国の牧場の景色が思い浮かびます。ああ、いいなと思いながら聴きすすめていくと、決して急がず弦をきっちりかっちり弾かせ、そのうえに金管と打楽器を載せるこのスタイルを過去にどこかで聴いた気がしてきます。1993年に同じサントリーホールで聴いた朝比奈さんの演奏です。

ただしアプローチはそっくりでも、そこは秋山さん。きちんと縦の揃った積み上げのなかで、それぞれの奏者に「もっともっと」をうながしていきます。同じように自然体に聴こえる演奏ながら、目の配りかた、テンポへの配慮、別物です。

そして第2楽章の侘しげな雰囲気がたまりません。

第1楽章の終わりでこれはすごい演奏だ終楽章はどうなることかと思っていたら、期待を上回るラストが待っていました。さきにギュンター・ヴァントさんとNDRの動画を引用しましたが、はっきり言って空間に吸い込まれるようなすごさ、身震いする感覚は、この動画より21日の実演のほうが上でした。舞台にマイクが並んでいたので、おそらく将来CDで発売されるでしょう。

発売のおりは聴きかえし、じっくり考えたいと思います。

twitter(X)を眺めていると「無神経に咳をする輩が居た」という書き込みがあります。2階席で聴いていて、ちょうど眼下にその咳をしまくっていたかたが居ました。奥さんらしき女性が咳止めに飴玉かなにかをしゃぶらせようとしたり、寒いらしく奥さんの羽織りもの(カーディガン?)を取り上げてくるまったり、途中休憩がないし座席を立つにも列の真んなかだし、責めるのも少々可哀想かな?という気はします。

前半のベルクのヴァイオリン協奏曲は、まだ学生のころ初めて聞いてなんのこっちゃとまったく判らずお手上げでした。はじめに聴いたときお手上げだった曲は、録音をそろえることもせず楽譜を入手しようともしないため、なにかを感じられるようになるまで年数がかかります。

このヴァイオリン協奏曲も、竹澤さんを独奏に迎えた今日の演奏で、やっと色気というか濃厚さがわかった気がします。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/6/67/Manon_Gropius_-_Berg_-_Violin_Concerto_-_CD_label.jpg

Manon Gropius - Wikipedia

この曲が献呈されたマノン・グロピウスで検索すると、英語版のwikipediaにこんな画像がありました。

この18歳で亡くなった少女の面影なんですね……。

今日はこのあと寝るだけだし、急いで帰ってもどうせ東京の電車は混んでるしなぁ、ゆっくりほかのお客さんがはけてからホールを出ようかと思っていると、楽員が袖に引っ込んだあとも拍手がつづき、秋山さんが舞台に戻ってきました。

たしかにこれを聴いたら、こうなりますよね……。