最低でも演奏会翌日には掲載するようにしているのですが、今回、本業の事情により書くのが遅れました。
http://www.okayama-symphonyhall.or.jp/page01Detail.php?key=3730
岡山フィルハーモニック管弦楽団第72回定期演奏会~蘇る、興奮の時~
日時:2022年5月22日(日)【開場】14:00【開演】15:00
会場:岡山シンフォニーホール 大ホール
[出演]
指揮:秋山和慶
ピアノ:松本和将
[曲目]
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
ムソルグスキー:禿山の一夜(リムスキー=コルサコフ版)
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
「秋山和慶ミュージック・アドヴァイザー就任記念」「岡山フィルハーモニック管弦楽団設立30周年記念」の演奏会ということで、岡山シンフォニーホールにはじめて足を運びました。
1階平土間と両脇3層のバルコニー席(厳密には中2階+2、3階のようです)がある馬蹄形多目的ホールで、着座して漫画を読みながら、開演を待ちます。コンサートホールはどこもなんらかのクセがあり、どこで聴いても音が良いホールというのは、ほとんどありません。ミューザ川崎か、あと私の近場だと福岡サンパレスか、響ホールか……。
舞台袖から聴こえてくる音を聴くかぎり、1階後列はなかなかの風呂場残響のようです。アクロス福岡同様、何回か足をはこんで耳が痛くならない場所を探すか、最初から2階席に逃げる必要がありそうです。これだけ天井高があれば、両側の白っぽいパネルを木の素材に変更するだけで、ずいぶんと化けそうな気もしますが、いまはほかの施設(ハレノワ?)建設の真っ最中で、手が回らないのかもしれません。
ただ、昭和後期~平成初期は「残響2秒」のザ・シンフォニーホールが「お手本」として崇拝されていた真っただなかで、そのうえで(本家ですら断念した)1,800~2,000席確保が興行上求められていたため、このホールだけでなく、どこも無理しているのが現状です。首都圏のようにホールがひしめき合っているところだと、音をとって座席数を捨てたら、施設利用料を安くしないと稼働率が上がらないなんてこともありますし……(名指ししませんが、逆に音を捨て座席数確保して稼働率良好なところもあります)。
この日、数分ほど演奏会が中断しました。
上層階から補聴器のハウリングがしているのは気づいていたのですが、だれもまわりは指摘しないのかな?とおもいつつ、聴いていました。補聴器は、あくまでもひとの声を増幅するためのものですので、演奏会のように音の強弱が繰り返すところでは、センサーが狂い、ピーピーやらかすことがあります。
隣に座っていた老齢の女性が、連れの(おそらく)娘さんに「補聴器さっきエスカレータおりたとき外していてよかった」と小声でつぶやきます。
楽章の切れ目で、数列前の男性が立ち上がり「どなたか補聴器を確認してください!音が聴こえません!」と声をあげました。その間も補聴器の音はしていて、スタッフのかたがかけずりまわり、おさまるまで数分ほどかかったでしょうか。
朝比奈さんがお亡くなりになる前だから最低でも20年は経つのですが、大阪でテレビ収録が入るとのことで、演奏会場の入口で「補聴器装着のかたは申し出ください」と受付のかたが叫んでいたことがありました。入場券の半券をもぎるかたの手元に目をやると、2つ箱が用意されており、補聴器のかただけ半券を違う箱に入れていました。数枚ほど入っていたでしょうか。おそらく今回のような事故があったときに、その半券の座席番号をみて、犯人捜しのてがかりにするつもりだったのでしょう。
これの少しまえに、朝比奈さんが都響に客演してサントリーホールだったかでブルックナーの7番をやったときに補聴器ハウリング事故があり、インターネットの掲示板でだいぶ「祭り」になっていました。朝比奈さんでブルックナーをやればすぐ券が売れた時代です。あんなのでハウリング事故なんて、苦情すごかったでしょうね……。そういう影響があったのかもしれません。
高齢化がすすみ補聴器の出荷台数は20年前のほぼ2倍になっているそうで、こういう事故が起こりうる確率は格段にあがっています。しかもクラシックの演奏会はお客さんの年齢層は高めですから、今後どのような対策をとっていくのか、ホール側も頭が痛いところです。
この演奏会中断の件、終演後、立ち上がって発言をされたかたが着座して熱心にアンケートを記入されておられました。熱心だなぁとおもいつつ会場を去ろうとしたとき、背後から「あんなに言わんでも」と男性のつぶやきが聞こえて、耳を疑いました。
ふつう、どこの会場でも、ほかのお客さんは言い出しにくいことをしっかりと指摘してくれるひとに感謝するものだとおもっていたのですが、そうではないかたもおられるのですね……。
コロナ騒動下、密をさけるための分散退場をどこのホールでも実施しています。このときホールによっては、開演前に、退場時にどう案内するかを予告するところがあります。あらかじめ自分がどう案内されるかを把握しておけば、いつ声掛けされるかわからず(電車間に合わないかも?)と五月雨で指定外の客が動きはじめるのも減るとおもうのですが、なかなか事前予告をやっているところはありません。帳面けしでやっている側面もあるのかもしれませんが。
あと驚いたのは、半券の裏に個人名と連絡先を書かせていたことです。
ほかの客の話を盗み聞きするかぎり、どうやらコロナ発病者が出たときのため、半券の裏に氏名と連絡先を書かせる運用をやっているようです。知らぬふりをして「なぜ書かせるのか?」とそれとなく質問したら「書いてもらっています」と女性スタッフが断言し、情報収集目的の告知がないのには笑いました。そのあと開場を待っていたらちけぴの入場券をもっていたかたの半券を男性スタッフがみて「連絡先を書くところがこれはない。おかしい」と言っているのを眺めていると(もしかして自腹で県外に行き、よそのホールでよそのオーケストラの公演聴かないんだろうか?)とふと脳裏によぎりましたが、ほんとうにおせっかいになるので余計な口出しはしません。
肝心の演奏についていろいろ書くまえにずいぶん余計なことを書いてしまいました。
ここのホールもこのオーケストラも初体験なので「ホールがそう聴かせているのか」「オーケストラの演奏がそうなのか」があまりに不鮮明なところがあり、悩んだ結果、後半の「火の鳥」、昨年ほかのオーケストラで聴いたものに負けていなかったことだけ書いておくにとどめておきます。
秋山さんと新日本フィルの「火の鳥」を錦糸町のすみだトリフォニーホールで聴いたときも感じたのですが、ほんと十八番です。秋山さんの「火の鳥」は、間違いがありません。
岡山フィルの指揮者に秋山和慶氏就任 日本で指折りの楽団に 22日に初の演奏会【岡山】
(岡フィルの指揮者に就任した 秋山和慶さん)
「日本で指折りの楽団となるにふさわしい状況が整っている。これから力いっぱい頑張っていきたい」
秋山さんの任期は5年間で、初となる演奏会は5月22日、岡山市の岡山シンフォニーホールで開かれます。
指折りの楽団には、指折りのホールがありスタッフがいます。大小問わず少なくとも気を吐いている(いた)オーケストラはみなそうでした。中部フィルなんて、会場に入場するときの年配スタッフの声掛け、おじぎの挙措が「安い券で入場して申し訳ありません」とこちらが恐縮するくらいすごいですもんね……。往年の大フィルも朝日放送時代のザ・シンフォニーホールもすごかったし、秋山さんの年齢をかんがえると5年でどこまで化けられるかという気もするのですが、楽しみではあります。