松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

2023年7月9日の日録

南方熊楠「神社合祀に関する意見」

図書カード:神社合祀に関する意見

日高郡上山路村は、大小七十二社を東大字の社に合併し、小さき祠はことごとく川へ流さしむ。

前述一方杉ある近野村のごとき、去年秋、合祀先の禿山頂の社へ新産婦が嬰児とその姉なる小児を伴い詣るに、往復三里の山路を歩みがたく中途で三人の親子途方に暮れ、ああ誰かわが産土神をかかる遠方へ拉り去れるぞと嘆くを見かねて、一里半ばかりその女児を負い送り届けやりし人ありと聞く。

西牟婁郡三川豊川村は山嶽重畳、一村の行程高野山を含める伊都郡に等しと称す。その二十大字三十二社を減じて、ことごとく面川の春日社に併せ、宮木をことごとく伐りて二千余円に売りながら、本社へは八百円しか入らず。さてその神主田辺へ来たり毎度売婬女に打ち込み、財産差押えを受けたり。この村は全く無神になり、また仏寺をも潰しおわり、仏像を糞担桶に入れ、他の寺へ運ばしむ。

また西行の『山家集』に名高き八上王子、平重盛が祈死で名高き岩田王子等も、儼然として立派に存立しおるを、岩田村役場の直前なる、もと炭焼き男の庭の鎮守たりし小祠を村社と指定し、これに合併し、その跡の神林(シイノキの大密林なり、伊藤篤太郎博士の説に、支那、日本にのみ見る物なれば、もっとも保護されたしとのこと)、カラタチバナなどいう珍植物多きを伐り尽して、村吏や二、三の富人の私利を営まんと巧みしを、有志の抗議で合祀は中止したが、無理往生に差し出さしめたる合祀請願書は取り消さざるゆえ、何時亡びるか分からず。 

南方熊楠 神社合祀に関する意見

ひと昔まえ、神社をつぶして整理すればするほど役人は仕事をしたことになるため、どこもかしこも取り潰しの嵐が吹き荒れた時代がありました。

歴史ある神社であっても取り潰しの対象となり、(統合さえすれば仕事が終わったことになる)役人が交通の便だけで統合先を指定しそこに合祀させようとした話など、南方熊楠先生が地元和歌山を中心に書き綴っておられます。

若いころこれを読み、日本もじつはろくなものではない、文革ポルポトを笑えないとあきれたものです。事実を知る年寄りはいずれ死に、都合の悪い記録は学校で教えませんから、結果、勝者の美談だけを学んでそれが当たり前になっていきます。まさに歴史はつくられるのです。

怖いですね……。

 

9日の記録

9日は9時から、飯塚市内でネット通販関係の打ち合わせをいれていました。

自宅を出るさい雨雲レーダーを確認すると、八丁峠の向こう、筑豊は真っ赤です。

いわゆる「JR道(昔の上山田線跡)」を北上するのですが、水たまりの多さにおどろきます。

現在取り扱っている土鈴(英彦山がらがら)の写真を撮り直す件と、あらたに猫グッズを取り扱う件について、打ち合わせをします。

打ち合せを終えて店をでるとき、赤しそのシロップをいただきました。

ネット通販の母体となってもらっている雑貨店は、飲食店併営です。ご近所さん向けの日替わり弁当配達がメインになっていますが、店内で食うとひとくちサイズのゼリーがおまけでついてきます。

ゼリーの素として、梅の砂糖漬けと赤しそのシロップを自作しておられます。

ノンアルコールビール(オールフリー)と赤しそシロップを9:1で割り、ほのかに赤しそ香るピンク色のビールにしてみました。ホップの苦味をシロップの甘さがやわらげ、飲みやすい炭酸飲料になります。

飲食店といっても事実上イートインスペースがある弁当屋のためアルコールの取り扱いはありませんから、近所のうどん屋や焼鳥店にビール割り用シロップとして売り込みに行けばいいという話をしました。

とうぜん、ふつうに炭酸水で割っても美味しくいただけます。苦味がないぶん、すこし味は単純になりますが……。