松村かえるの「かえるのねどこ」

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久留米市民オーケストラ第34回定期演奏会

第34回定期演奏会 2022年5月28日(土) | 久留米市民オーケストラ 公式ホームページ official website

久留米市民オーケストラ第34回定期演奏会
日時:2022年5月28日(土)18時開演(17時開場)
会場:久留米シティプラザ「ザ・グランドホール」
[出演] 
指揮:飯守泰次郎
[曲目]
ブラームス 交響曲 第3番 ヘ長調 作品90
ブラームス 交響曲 第1番 ハ単調 作品68

久留米シティプラザ | KURUME CITY PLAZA

久留米市中心部 六ツ門(むつもん)に久留米シティプラザという複合施設があります。そこに「グランドホール」という多目的大ホールがあり、過去に講演会で数回入場したことはあったものの、(おそらくほんらいの目的である)クラシック演奏会の会場として入場したことはありませんでした。

2016年4月オープンの建物に、なんと7年目にしてはじめて演奏会の会場として足をはこびました。

客席は4階になっており、バルコニー席は5層あります。

以前講演会の会場として使用されていたとき、発声がじつにクリアでした。声量の問題はあれど生声がきちんと届くホールかどうかは、重要です。

コンサートホールのなかには、モヤモヤとした響きでなにを言ったかわからないところが多々あります。そういうところはほぼ例外なく、1990年代、コンサートホール建設が流行した時期のものです。

このグランドホールは天井が高く、客席を4層に積み上げ、バルコニー席を1列とする代わりに5層とし、客席背後に空間を設ける工夫がなされています。これ、コンサートホールというよりは、オペラハウスや劇場に近い構造なのですが、結果、聞き取りやすさに貢献しています。

むろん、クリアな音響というのは良し悪しもあります。今日のような地元のアマチュアオーケストラの演奏会だと、途中入退場の制限がありませんし、出演者の家族とおぼしきお子さん連れも多数おられます。客席扉の開閉、足音、飴玉の包み紙をひらく音、携帯電話の時報、子供に親が曲の解説をする小声、曲が終わったと勘違いして拍手しようとするのを阻止する姿など、音や雰囲気が伝わってくるものが、客席のどこからしたかじつにあきらかです。ミューザ川崎などの全国有数のコンサートホール同様、客席からも舞台からもすべての発音が響き合うわけで、お客さんにも緊張感が求められます(笑)

 

飯守泰次郎さんを最後に聴いたのはいったいいつだったろう?とこの日記を検索しても出てきません。ということは、少なくとも2009年以降にはない、ということです。

この日、付き添いのかたと一緒に飯守さんが登場されました。すでに80歳を超えられており、どこか足取りもおぼつかない様子でした。指揮そのものは背後でみていてさすがというほかありませんが、力をいれるところの推進力と、そうでないところの色分けの上手さを感じます。

往年の朝比奈さんでも、若杉さんでもそうでしたが、見せ場をきちんと作っていくと、自然と演奏がさまになっていきます。いろいろと音が欠けたり反ったりしても、伝えるべきものがきちんとあれば、耳は中身に没入していけるものなのです。

前半の交響曲第3番をなんとか終えて、休憩後の第1番は、最初から最後までじっと聴きいってしまいました。変わったことをするわけではありません。ただ流れに身を任せていくうちに、最後にたどりつく演奏ですが、その至るところに若さがみえます。

80歳を過ぎた指揮者のかたに若さを感じるのは失礼かもしれませんが、朝比奈さんも晩年は、いろいろなものをそぎ落としていきました。私たちは老境というとなにか重厚さやのろさをイメージしてしまいますが(実際、高名な指揮者の最後の来日公演でいつ終わるの?と、おもわず時計をチラ見してしまったことがあります)それは誤りかもしれません。

素晴らしい演奏会でした。