今日は仕事場の集団健診のため、朝は絶食です。朝食を準備する必要がないため、朝のお稽古で久しぶりに墨を磨りました。
墨運堂さんの「陳玄」を使います。平成24年造とあるため、9年は経過した物です。
iPhoneで撮影した画像ではわかりにくいかもしれませんが、この固形墨を濃くなるまで磨ると、微妙に青く光ります。油膜に近い感じです。
カタログには、使用しているススは鉱物性松煙(高級松煙)とあります。
ススの採取の仕方には、松煙(しょうえん)採りと油煙(ゆえん)採りがあります。松煙採りは、松脂の多い古い松を乾かし、薪にして燃やし、壁に付着したススを採取するものです。広い空間で火元に近いところは粒子が荒く、火元から遠いほど細かい粒子が採れ、細かいほど高級品とされました。
まだお習字をはじめたばかりのころ、松を実際に燃やして採取している事業者は1~2社しかないと聞き、疑問を抱きました。それにしては松煙使用とうたう墨があちこちで売られているからです。松なんてそんなに大量に伐採できるものなのだろうか……。
集塵装置も良くなり、炎の調節・分粒も可能で、多量生産致します工業煙の主流設備となりました。本来、液体原料は芯焚き、固形原料は直火焚きとなっておりましたが、液体原料も直火焚きで燃やせるようになりました。
これを墨屋に訊くと、松煙採りの方法で採ったものは原料問わずススに同じような特性があり、現代では松以外のものも燃やしてススを採っているとのことでした。そのときに聞いたのが、ナフタレン、ベンゼン、重油といったもので、それなら大量に入手できるよなぁ、と妙に納得したのをおぼえています。
鉱物性松煙がなにを原料にしているか、むかしはカタログやホームページに堂々と書いてあった気がするのですが、現在の墨運堂さんのホームページやカタログには見当たりません。企業イメージをかんがえれば、こういうのは隠すべきものかもしれませんし、生産量が毎年減っている現状、ナフタレンやベンゼンはすでに使っていないのかもしれません。