美風庵だより

幻の花 散りぬ一輪 冬日の中

日本センチュリー交響楽団第254回定期演奏会

https://www.century-orchestra.jp/concert/254teiki/

第254回定期演奏会
2021年4月9日(金)19:00開演(18:00開場)
ザ・シンフォニーホール
指揮
秋山和慶
ソプラノ
高橋維
モーツァルト
モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」K.165
マーラー
交響曲第4番ト長調

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4月9日、大阪・ザ・シンフォニーホールに行きました。

初めての日本センチュリー交響楽団の演奏会です。厳密にはその前身である大阪センチュリー響時代、「大フィルより上手い」という評判を聞き、どんなものかと演奏会を聞いたことはあるはずですが、まだ朝比奈隆さんが存命中のころでしたから、20年以上もむかしの話です。

当日、舞台を眺めて後藤さんがコンマスなのに気づきました。事前に調べておけよと言われそうですが……。それにしても白髪になっていて、最初誰かわかりませんでした。

CD&DVD | 中部フィルハーモニー交響楽団

9日と同一の曲目で、秋山さんと中部フィルの自主製作盤があります。約6年前のものです。以前入手し、折々で聴き返していました。

9日の演奏会、どうしてもこの録音との比較になることをご容赦ください。

今回、舞台を間近で視聴できる席として、ザ・シンフォニーホールのオルガン側席を選びました。こういう席を選んでもきちんと天井から音が降ってきて、正面客席から反射してくる音がそのあとにはね返ってくるズレが、まったく苦痛になりません。これほどのホールを建てることができた大阪のすごさをあらためて感じ入ります。

曲順どおりではありませんが、いろいろと考えた順で、感想を書きたいと思います。

なんといってもマーラー交響曲第4番が、この日の収穫だった気がします。とにかく秋山さんの表現する音楽が伸びやかで、それを音にする楽員の皆さんも的確。やっていることは6年前の録音とそっくりなのに、たいへん失礼なのは承知で書くと出てくる音の深みは、今日のほうがはるかに上です。どうしても4番というと3番と5番に埋もれてあまり聴く機会がありませんが、巨人・復活・3番の総決算で、かつ5番冒頭の「パパパパーン」への橋渡しとなる重要な曲なのだとわかります。

いや、わかるように演奏してくれているのです。表面的な可愛らしさの奥に、どすぐろい影がある、いかにもマーラーといった曲風だけでなく、書きながら常に進化(転進?)し続けた彼の姿もまた、わかるように。

交響曲第4番 (マーラー) - Wikipedia

マーラーは1892年に『少年の魔法の角笛』の歌詞に基づいて「天上の生活」("Das himmlische Leben")を作曲、1893年に他の「角笛」作品5曲をまとめて「フモレスケ」としてハンブルクで初演していた。3年後の1895年から着手した交響曲第3番の構想では、「天上の生活」は第7楽章「子供が私に語ること」として位置づけられていた。しかし、翌1896年には最終的に第3交響曲から切り離された。

(略)

1899年、アルトアウスゼーにおいて、『少年の魔法の角笛』から「死んだ鼓手」を作曲、8月20日からは交響曲第4番に着手する。「第4番」は、前述の歌曲「天上の生活」を第4楽章に置き、これを結論としてそのほかの楽章がさかのぼる形で作曲された。この年に第1楽章と第2楽章が、翌1900年に第3楽章ができあがり、8月5日、マイアーニックで交響曲第4番が完成する。その後、1901年10月まで補筆改訂されている。

この第4番、さきに終楽章が出来ており、後から1~3楽章が終楽章の素材を使って作曲された経緯があります。

交響曲第4番というと、第3楽章がメインであるかのように書かれることも多いわけですし、そのように演奏したと思われる録音・実演もあります。秋山さんはそういう考えをとらず、終楽章を結論として表現されているように感じます。

つまり、おおよそ100分かかる第3番の第1楽章から第6楽章までをいったん破棄して、第4番の終楽章につながるよう、あらためて3曲用意したことが理解できるようになっているのです。そしてそれは、マーラー特有の影というか、闇をしっかりと描いています。

第3楽章(もしくは第3番の第6楽章)で天国の扉が開かれたあとの天上界を描くのが、終楽章です。オルガン側席で、ちょうどソプラノ歌手のかたの背中を見ながら聴く位置であるため、よく聴こえなかったのが残念でしたが、そのかわり楽器の動きはよくわかります。聴いていて「夜の歌」の終楽章の元ネタはこれではなかったか、とふと脳裏をよぎります。この音楽をさらに自分でパロディ化したのが、あのどんちゃん騒ぎではないか、と。

どうもすごいものを聴いてしまったようです。

秋山さんも絶好調だし楽員の皆さんの食いつきもすごい。

4番?いまいちわからん。というのが、これまでの率直な感想でした。しかし、巨人・復活・3番という大曲を下敷きに、もう一回練り直したのが4番の本質だと、やっと気づくことができました。表向きのメルヘンな可愛らしさの背後にある影こそ、マーラーが書きたかった「闇」。この両者がないまぜになった姿が、総決算の総決算たるゆえんなのだと。

齢50が近くなって、今ごろ気づいたかと笑われそうですが、正直に白状させていただきます。

モーツァルトの「エクスルターテ・ユビラーテ」は、さきのマーラーの第4番の120年前の曲で、マーラーのようなひねくれた要素はなく、あたたかみのある優しい音色でした。

最後に、今回から舞台上でプレコンサートが開催されるようになったとのこと。第1回目は、ドヴォルザークの弦楽五重奏曲の第一楽章が演奏されました。最初はおっかなびっくりといった感じでしたが、途中からしっかりと盛り上がっていきました。

オーケストラの楽員やソリストを目指して頑張っておられる皆さんでしょうか。これからも頑張って欲しいと思います。