美風庵だより

風にちる 花のゆくえは 知らねども

ザ・シンフォニーホール開館40周年記念 Best of Orchestra The Symphony Hall×関西4オケ スペシャルコンサート

The Symphony Hall×関西4オケ スペシャルコンサート | 日本センチュリー交響楽団

ザ・シンフォニーホール開館40周年記念 Best of Orchestra
The Symphony Hall×関西4オケ スペシャルコンサート
日時:2022年11月3日(木)14:00開演(13:00開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
[出演] 
指揮:秋山和慶
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
[曲目]
ベルリオーズ:「ローマの謝肉祭」序曲
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ベルリオーズ:幻想交響曲

11月3日に行われた演奏会の曲目のうち、「牧神」と「幻想」については、2020年10月に行われたびわ湖ホール定期公演のもようが、youtubeにアップロードされています。

youtu.be

おおきくなにかが変わるということはありませんが、やはり収録と実演では雰囲気がちがいます。

幻想交響曲 - Wikipedia

以下の引用は、1855年版の作曲家自身のプログラムに基づく翻訳である。

「病的な感受性と激しい想像力に富んだ若い音楽家が、恋の悩みによる絶望の発作からアヘンによる服毒自殺を図る。麻酔薬の量は、死に至らしめるには足りず、彼は重苦しい眠りの中で一連の奇怪な幻想を見、その中で感覚、感情、記憶が、彼の病んだ脳の中に観念となって、そして音楽的な映像となって現われる。愛する人その人が、一つの旋律となって、そしてあたかも固定観念のように現われ、そこかしこに見出され、聞こえてくる」

wikiからベルリオーズ本人の解説を引用しましたが、読めばわかるとおり「女に袖にされた悔しさと絶望でクスリをやったら「見えた」世界を書いた」曲で、いまでいうサイケデリックのはしりです。ストーカー根性まるだし芸術ともいえます。

初演が1830年ですから、ベートーヴェンが亡くなって3年後。相当なかたやぶりだったことは、容易に想像できます。

九響演奏会に行ってきました(^^)v - 美風庵だより

九響定期に行ってきました。 - 美風庵だより

この日記を検索すると、なんと最後に実演を聴いたのが2013年4月に行われた九響の定期演奏会です。この曲、しょっちゅうどこかでやっている印象がありましたが、なんと実演が約10年ぶりとは……。自分で検索していてこれもびっくりでした。

 

「幻想」は第一楽章と第二楽章あたりまでは、比較的まともです。好きになった女優さんへの憧れと愛を告白し、舞踏会での印象を描きます。

だんだんキレてくるのは第三楽章からです。

そもそも新人作曲家と売れっ子女優ですから相手してもらえるはずはないんですが、自分を相手にしてくれない女優へのすさんだ心象が、第三楽章で荒野の情景として描かれます。

第4楽章「断頭台への行進」 (Marche au supplice)

その次の「断頭台への行進」で彼は、(クスリでみた夢のなかで)彼女を殺して死刑宣告されます。断頭台に向かう行進曲では、いっけん華やかな行進曲の裏でうごめく低音が、殺した彼のこころのやさぐれぶりを示します。

第5楽章「ワルプルギスの夜の夢」

そして最後、これもまたクスリがみせる夢のなかで、彼は魔女の宴(魔女が神々と行う祭典 ワルプルギスの夜ですね)に加わります。ディエス・イレが鳴って魔女や化け物が悪魔の流儀で彼の葬式をしてくれますが、そこにも奇怪な声やうめき声が満ちています(私が学生のころアマチュアオーケストラのみなさんが「にんじん、じゃがいも、さつまいも」と歌っていたメロディーもあります)。殺された女優もまた魔女に生まれ変わって加わっており、最後は大狂乱で盛り上がって終わります。

 

「幻想」は初演の2年後1832年に再演されるのですが、無名時代のベルリオーズを袖にした女優(ハリエット・スミスソン)が聴きに来ており、ベルリオーズの書いた解説とほかの聴衆の態度から自分がヒロインであることに気づき、よほど感激したのか交際がはじまり翌年結婚します。

ただ、さらに翌年子供ができたころがピークで、その後、仲は冷え込み数年で別居に至ります。 

演奏に50分かかるストーカー大作を1曲まるっとつくるくらいの熱情家にしては、結婚したらすぐ冷え込んで別居というのも解しにくい話ですが、よくよくかんがえてみるとこの曲を初演するころにはベルリオーズ自身もほかの女性と交際してその婚約が破談になっていたりしますし、多情家で「釣った魚にはエサはやらない」典型だったのかもしれません。

 

この日の演奏は秋山さんらしく、(ある指揮者のように)冒頭から「悲しい」「悲しい」と叫んだりはしません。

曲が進むにつれて狂気があらわになっていく姿が、わかります。実演はメロディー以外の楽器の動きがよく聴こえ、華やかさの裏にあるグロテスクさが伝わってきて、youtube配信ではうまく聴こえない部分も、楽しむことができました。

 

さきに引用したyoutubeでもわかるとおり、「牧神」は、どこかふわふわとしたイマドキの演奏ではありません。響きや構造を重視した妙な化粧をそぎ落としたもので、アンセルメを想起させます。

否、ミュンシュかも。

 

九州交響楽団名曲アルバム-シリーズ第4弾-

「謝肉祭序曲」は、2007年に発売された九響とのCDの1曲目でした。

有名な曲なのですが、このCD発売当初、この「序曲」のあとにおさめられたドヴォルザークのスラブ舞曲や、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」ばかり聴いてしまい、意外と聴いてこなかったのに気づきました。演奏会が終わって、15年前の録音を聴きかえしています。