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負け組の遠吠え(24)2022.2.10追記



内密出産?

熊本市、「内密出産」協力へ方針転換 慈恵病院と協議へ|熊本日日新聞社

熊本市の大西一史市長は9日、慈恵病院(同市西区)が独自に取り組む「内密出産」で生まれた子どもの養育や母親の支援に現行法の範囲内で協力し、母親の身元情報の保管方法など運用上の課題についても病院側と協議する場を近く設ける考えを明らかにした。
市はこれまで、同病院の内密出産について「法令に抵触する恐れがある」として実施を控えるよう再三求めてきた。しかし、昨年12月に内密出産を希望する県外の10代女性が出産し、病院が14日にも母親の名前を記さずに出生届を提出することなどを受け、現実的な対応を取る方針に転換したという。
大西市長は9日の会見で、蓮田健院長と1日に面談し、予期せぬ妊娠に悩む女性の切迫した事情や、対応に苦慮する医療現場について説明を受けたことを公表。「法制度がない現状では慎重に対応してほしいという姿勢に変わりはない」としながらも、「内密出産を控えるよう求めるだけでは済まなくなった。ケースに応じて弾力的に現行法の中でできる対応をしていく方針に改めた」と語った。

望まない妊娠での内密出産「法令に抵触の可能性」…市が自粛要請、病院は応じない考え : 医療・健康 : ニュース : 読売新聞オンライン

慈恵病院は、子を匿名で託せる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営。昨年12月、自宅などでの「孤立出産」を防ぐ取り組みとして「内密出産」を導入した。院内の新生児相談室長だけが母親の氏名を把握し、出生届は親の名前を空欄または仮名にして病院が提出する。これに対し、市が法務省と厚生労働省に現行法上の問題点を問い合わせていた。
市によると、両省から7月27日付で回答があった。法務省は具体的な回答を避けた。一方、厚労省は「児童福祉法などにただちに違反するものではない」とした。また、生まれた子どもが自分の出自を知る権利が保障されるよう、親の身元情報の適切な管理などについて市が行政指導を行うことが必要との見解を示した。
これを受けて、市は「内密出産が現行法上適法といえるのか明確になったとは言いがたい」と判断。

病院の暴走

「内密出産」について岸田首相が見解、慈恵病院長が玉木代表らと面会:朝日新聞デジタル

慈恵病院の蓮田健院長は代表質問前に、国民の玉木氏と伊藤孝恵参院議員と議員会館で面会。「(法整備の)近道は私が捕まることかと思う」などと述べ、内密出産への理解や必要な法整備を訴えた。玉木氏は「先生が捕まったら社会的な関心が高まると思わせていること自体、政治の不作為だし我々の責任。先生の思いを受け止めてできるだけスピーディーに前に進めたい」と応じた。

この問題、なにが最大の問題かというと、法治国家がさだめたルールにもとづき運営されているはずの病院が、自分の考える理想を優先し、既成事実をつくって国会議員を巻き込み、周囲を振り回していることにあります。

あまり書くと「薄情な奴だ」と読者減らしそうなので恐々としながら書いているのですが、ざっと考えても問題は山積みです。

(1)「親に縁を切られたくない」し「相手からおろせと暴力をふるわれた」ので、(病院関係者以外に)身元をあかさずに産んだ。子供は特別養子でだれかに引き取ってもらいたい。母親本人は出生届を出していない。これって棄て児じゃないですか。この母親、そもそも保護責任者遺棄ですよね?たまたま病院で産んだというだけで「棄てる意思ありあり」です。

(2)戸籍法では、父母が届け出できないときは病院が出生を届け出るとなっていますから、母親が届け出ない以上、病院が代わりにやらざるを得ません。病院に母親は自らの素性をあかしているのに、それを書かずに出生届の母親の欄を空白にして出せば、病院は公正証書原本不実記載、要は嘘を書くことになります。

そもそも保護責任者遺棄の犯人をかばってる時点で、共同正犯は無理でも、ほう助でしょう。

(3)病院は、母親が何者かを知っています。国籍法は、父母の国籍をもとに国籍を決定します。母親が日本人でなければ、日本国籍は与えられません。この例外が「棄て児」で、出生地主義、つまり、見つかった場所で国籍が決定します。

残念ですが院長、お望みどおり捕まってください。

私見

いちばんまるくおさまるのは、おそらく、棄て児とおなじ扱いをすることです。

法律では、棄て児を発見した者や警察官が市区町村に届け出ることになっていますから、家で産んで「赤ちゃんポスト」に置いてくる例も、病院で産み棄てる例も、おなじに扱うよう、必要であれば法令の改正をするしかありません。

もし公正証書不実記載に問われたくなければ、病院は母親の素性を訊いてはいけないことになります。

内密出産どころか、匿名出産ですね。

ただ、これを熊本の特定の病院だけに適用するわけにはいきませんから、全国の産科医院は恐々とするでしょう。かりに救急搬送されてきて、支払い踏み倒して逃げられたら、病院側はえらいことになります。

この院長の理想は、必ずしも普通の病院の理想ではありません。保護責任者遺棄にあたらないように法令を改正してしまうと、熊本まで行けないひとは、病院たらい回しがいまよりひどくなりますよ?院長、それはあなたの理想に反しませんか?

もう一点付け加えると、たまたまこの病院が熊本市内にあるから熊本市が動いているわけで「法定受託事務だからお前が判断しろ」と法務省が解釈をぶん投げているのは、ほんとうにくそ役人の最たるものです。

「事業者が直接質問してくるな市区町村を経由してから質問してこい」「「戸籍」*1をちゃんとぜんぶ読んで類似例を調べてから照会しろ」「おれたちに調べさせるな」。
地方法務局・支局でろくなメに遭ったことがないので、法務省がらみはどうもそれだけでイラっときてしまいます(笑)

事実上の「門前払い」(2022.2.10追記)

内密出産 慈恵病院、出生届提出を当面保留 法務局回答受け|熊本日日新聞社

蓮田院長が同局を訪れ、書面で回答を受け取った。親の欄が無記入の出生届を提出することが刑法の公正証書原本不実記載罪に抵触するかについては「捜査機関において収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄」とした。
また無戸籍者の解消に取り組む立場から、「速やかに日本国籍を有するお子さんが戸籍に記載されるべき」「出生届の提出によらずとも市区町村長の職権により戸籍の記載ができる」と回答。市区町村長へ、子の出生日と出生地の情報を提供するよう求めた。
届け出期間(14日以内)を過ぎた場合も過料の対象にならないという見解も示された。蓮田院長は「出生届を提出することで警察の捜査がなされ、出自証明書が開封されるのは女性の本意ではない。出さないでおくことが平和な方法ではないか」と話した。

記事を読むかぎり、病院に「馬鹿な遊びはやめて実母の戸籍に熊本市から職権記載させろ。さっさと情報提供せれ」と指導したことがわかります。

門前払いです。

おそらくこれで熊本市も態度をかえるでしょう。

しかしこの院長、無戸籍のままもありうると堂々と言ってますから、これが本当なら内密出産をえらぶと、無戸籍・無年金・車の免許とれない・選挙行けない・旅券つくれない・銀行口座つくれない・雇用保険健康保険なんじゃらほい?状態になるわけで、ある意味、抑止力にはなるのかもしれません。

ささやかながら(2022.2.10追記)

こうのとりのゆりかご 設立にあたって - 妊娠SOS │ 望まない妊娠、赤ちゃんが育てられないなど、妊娠・出産でお困りの方の相談電話窓口

ささやかながら、慈恵病院の口座に支援金を振込させていただきました。

「子供に罪はない」という病院の主張は間違ってはいません。

ただ、子供に罪がないということと、親をかばうことはべつです。

なぜ棄て児した親をそこまで保護せにゃならんのでしょうか?

 

*1:テイハン社が発行するいわゆる「業界誌」