松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

負け組の遠吠え(19)

12月27日、町内会などの関係で、近所の7名で集まり忘年会をしました。

あるかたが、いま住宅ローンを組んで家を建て直すべきかどうか、という話をします。

その家はむかし家電店でした。閉店後リフォームしぜんぶ住家にしていたのですが、元がふるいため、いろいろ不具合があるようです。

建て替えるにしても、どうも変動金利でカネを借りるというのを、嫁の親がよく言わないとのこと。

情勢判断を訊かれたので、以下のような話をしました。

負け組の遠吠え(14) - 美風庵だより

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/019.gif

1)(この日記でも以前書きましたが)日本は30年以上、財政赤字(赤字国債)前提で予算を組んでいます。支出に対して税収が追いついていません。

 

2)(MMT論者ではないかぎり)国の借金だろうと個人の借金だろうと同じように返済しなければなりません。元本は借り換えで先延ばししても、利払いだけはぜったい必要です。利払いできなくなれば、首の皮すらつながりません。元本飛ばし(借換債)の横行が、赤字国債の発行残高が膨れ上がってきた理由でもあります。

 

3)もし景気が良くなり、インフレがすすめば、政策金利を引き上げて調整する必要があります。ところが、政策金利を引き上げれば、国債の利払い金利も上昇します。政府としても日銀としても、超低金利を維持しつづけることが、現在の借金漬け経営を成り立たせる唯一の道ですから、最初からインフレに対して打つ手はありません。

 

4)景気対策で超低金利政策をとっているのではありません。政府を延命させるためです。どこかで景気が上向かないようブレーキを踏んでおく必要があります。
手っ取り早いのは、税金をさらにむしることです。

 

5)戦前から日本には「源泉徴収」という税金天引き制度があります。給与生活者の多い時代は、この制度をつかって狙い撃ちすれば税金が確実にとれました。ところが高齢化がすすみ年金生活者が増えると、この制度で懐を狙える対象は頭打ちになります。
生きているかぎり衣食住におカネがかかります。消費税は年金生活者にも負担させることが可能です。

 

6)「消費税をあげると景気は良くならない」と騒ぐ評論家は、正しいのです。ただ、いままで積み上げた財政赤字の返済をわざと無視しています。読者を煽ってアクセス数を稼ぎ、儲かるためにわかったうえでリップサービスをばらまいています。

 

7)今後も日銀は政策金利を低く抑えざるを得ません。変動金利で住宅ローンを組んだところで、景気が良くなって金利が爆上げの時代なんてそう簡単に到来するわけがなく、たぶんその前に35年ローンの返済が終わっています。状況が悪化することはあれ、好転する動機が見当たりません。だから、変動金利をおそれる必要はありません。

 

8)コロナ対策で、どこの国も財政出動しています。すでに一部の国は、インフレ抑制のため政策金利の引き上げに動いています。財政規律がガタガタの国とみなされて円安が進めば、石油も食い物も輸入に頼っているこの国は、ひどい円安になり、いよいよ立ち行かなくなります。
戦前、養蚕で絹を世界中に輸出していた時代のように、この国でつくれて外貨が稼げるものを持っているひとたち以外は、貧乏になるでしょう。
行きつく先は、「安い労働力」として外国に買い叩かれる道です。「からゆきさん」の時代まで、下手すると戻りかねません。

新装版 サンダカン八番娼館 (文春文庫)

あなた、山崎朋子の「サンダカン八番娼館」読みましたか。「こうはなりたくない、させたくない」とおもって、私やあなたの世代がしっかりしないといけません。

 

9)円安がすすめば、建材もほとんどは輸入ですからあとから建てたほうが、高くつきます。

https://www.kensetu-bukka.or.jp/wp-content/themes/custom/img/business/so-ken/shisu/shisu_kentiku/1-2_shisu_kentiku_graph_202111.jpg

建築費指数 | 指数・統計情報・調査研究報告 | 研究・指数・統計 | 一般財団法人 建設物価調査会

すでに建築費指数はどんどんあがっています。オリンピック特需が終われば下がるという話でしたが、輸入資材の値上がり(円の価値下落)で、指数の上昇は止まっていません。

もしあなたが家を建て替える気があるなら、早めに決断したほうが、同じ品質の資材で、比較的安く建て替えることができます。

 

10)インフレが進行しても、金利の引き上げが出来ませんから、大局的に見て円安は止まりません。

いまのうちに、銀行預金ではなく、たばこ代程度でよいから、純金やドル、米国市場に投資するETFや投資信託の「積立」をはじめておくことをおすすめします。借金返済よりも早く、ほんの少しの額でも取り掛かるべきです。

まとめ買いはアホのやることです。投資ではなく、投機にすぎません。相場はつねに変動します。高いときも安いときも、気にせず毎日買い続けられる仕組みを利用することです。

 

11)いまの情勢を考えれば、借金の繰り上げ弁済なんて無駄です。そんなカネがあれば、1円でも投資をしてください。

利息がもったいない?いやいや、こつこつ並行して投資して、含み益を利確して繰り上げ弁済してください。そのほうがよっぽど利息を節約できます。

という話をしたのですが、どうも頭が追いつかない、というので「日記に掲載したら、そのURLをショートメールで送るので、抜粋を義父に読ませたらいい」と言っておきました。