美風庵だより

風にちる 花のゆくえは 知らねども

負け組の遠吠え(16)

11月29日、町内会の隣組長さん(よそでは班長さんという言い方もあるようです)が、神宮大麻を持ってみえられました。「毎年、ほかで1体いただいている。神宮大麻は町内会から受けていない」旨をつたえるのですが「町内会長(区長)が【私の名】さんは買うはずと言っていた」と主張するため、ここで話をしても面倒なので1体引き取りました。

神社めぐりをしているうえに、地元の町内会が管理しているお宮の行事で準備を手伝ったりしているものだから、どうも神社は嫌いではないと目されているようです。

御承知のかたも多いと思いますが、1,000円で頒布している神宮大麻は、神宮の式年遷宮の原資となります。式年遷宮に約550億円かかるうちの330億円が、神宮大麻の売り上げからまかなわれます。

伊勢市にある神宮でせっせと作成したお札を、神社本庁が各都道府県の神社庁をつうじて神職が居る神社にノルマを設定して割り当てます。たいていの田舎神職は拠点となる本務社のほか、兼務社を20~30社ほど抱えていますから、それも合算した数の割り当てがあり、各神社の氏子に頒布するというしくみです。

ここでいう「氏子」とは、神社本庁側が各神社の受け持ち区域として線引きしたエリア内に住む住民を指します。住民登録の有無は関係ありませんし、寺のように墓があるかどうかも関係ありません。そこに住んだら上納する関係が生じるわけですから、感覚として、ヤクザの縄張り(シマ)に近いものです。

甘木に引っ越してくる前の経験から言うと、神宮大麻の売り上げは各都道府県神社庁をつうじてすべて神社本庁に納められ、神宮が半分とって残りは「交付金」名目で神社本庁・各都道府県神社庁・神職の居る神社に分配されます。中抜き後の末端の取り分は1割ちょいだったでしょうか。

似たような集金システムに「赤い羽根共同募金」があり、あちらは事務費2割とって残りを分配します。8割還元です(繰り返しますが神宮大麻は5割も抜かれます)。

むかしから式年遷宮の費用をこうやってかき集めていたかと言うとそんなことはありません。もともと神宮そのものが現王朝が天下をとるまえの英雄のみなさんを「祀り上げる」ための施設ですので、最初は皇室が費用を負担していました。のちに皇室が負担に耐え切れず断絶や延期があり、やがて御師(ツアーコンダクターの原型)による「伊勢参り」「伊勢講」そして参拝記念のお札である「大麻」を配り、各家庭でお祀りしてもらうための「神棚」まで売りつけるという、まるでいまの団体旅行のような形式が確立され、安定した収入の元に20年ごときっかり式年遷宮が行われるようになっていきます。要は、あてにならない皇室より、庶民のふところからお金をいただく道を選んだわけです。江戸時代、日本の人口が約3000万人というご時世に、約500万体のお札を配っていたというのですから、ただごとではありません。

明治新政府以降、戦前までは全額国費要は税金で式年遷宮を行っていました。戦後、直接税金投入が出来なくなったため、現在の仕組みに移行します。

で。

なんで九州王朝をはじめ現王朝が潰してきた先人の祀り上げに加担しないといけないのかという根本的な疑問はあるものの、これをいまさら言ってもはじまりません。しぶしぶ従ってはいますが、いちばんの問題は、ノルマが減らないことです。

過疎で人口が減ったり、神棚のない家が増えたりしても、ノルマは減りません。

「減らすな1体ふやせ1体」だったでしょうか。寝言が書かれた督励文をみた記憶があります。

新聞の押し紙についての実態解明に関する請願:請願の要旨:参議院

ここには、新聞業界でいう「押し紙」と同じ構図があります。

都会のバカスカ儲かっている神社は、御朱印やその他の売り上げからノルマ分をぜんぶ立替払いして、あとから回収すればすみます。しかし、田舎神社はそもそも家(氏子)が減っているうえに、若い世代は神宮大麻をもらいたがりませんから、自腹が増えます。1割ちょい還付があっても、売れ残りが多ければ、必ず自腹で赤字になる構図です。

田舎の神社ほど、自分のところのお宮のお札より、神宮大麻をすすめるのは、そういう裏があります。なかには一之宮の別表神社で「神宮大麻とセットじゃないとうちのお札はお渡ししない」と寝言をぬかす山口県の某神社みたいなところもありますが。

売るほど「神社界に貢献した」ことになり正装で着ることができる衣冠の色が変わります。あの世界は、衣服の色でエラさがわかるのです。

神職に赤字を押し付けるわけにもいかないので、むかし住んでいたところでは、各地区(集落)ごとに割り当てを買い取り、配った余りは正月のお焚き上げに出すか、自営業者の事業所に祀ってもらったりしていました。なかには、地元から、組合からと複数頒布をうけているかたもおられました。

このカラクリに気づいたのは、実家住みで祖父の手伝いをしていたころです。

税金とかわらないエグさにうんざりしたものの、結局バチをかぶらないと仕方がない話です。ここに引っ越してきてからも、実家のぶんと一緒に自分の分も引き受けています。すこしでもノルマにつき合わないと、仕方がありません。

たまに実家に行ったついでに引き取り、そのまま近隣の神社の古札入れにいれています。仕方なく引き取ったものを、ありがたく拝むほど馬鹿ではありません。

いま住んでいるエリアを氏子区域とする神社がそこまで頑張らないとノルマ達成できないはずはありませんので、ここからは遠慮しています。

神棚にふたたび神宮大麻を納めることはないでしょう。

式年遷宮|伊勢神宮

遷宮は、遠い先祖と私たちをつなぐ心の絆として、途絶えることがないよう受け継いでいかなくてはなりません。
かつては国費で行われていましたが、現在は国の安泰と国民の幸福を祈られる天皇陛下の大御心に、国民が募財という形で力を結集して行われています。

ほんとうにこのとおりなら、妙なノルマ割り当てをやめてインターネットで寄付金を募れば、全国の関係者が持ち出しをすることなく、希望者がこころゆくまで納めると思うのですけどね……。

会員のご案内|伊勢神宮崇敬会

どちらかと言えば、崇敬会組織を拡大したほうが、いまのご時世にあう気がするのですが。