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久しぶりに福岡県神社誌の記載部分を、以下に画像で貼り付けてみることにします。
以前、綾杉るな氏のブログや著作で存在を知り、そのうち訪問してみたいとは思っていましたが、ほかの地域の神社めぐりを優先してしまい、すっかり忘れていました。あらためて地図を確認すると、月に数回は通っている「道の駅 香春」のすぐ近くです。拍子抜けしました。
日ごろ通っている道ということもあって、とくにナビ等を確認せずとも、現地までたどり着きました。古代、近くにある香春岳が銅の産地だっただけあって、緑青を吹いた銅の鳥居です。
二の鳥居の横に、1台がなんとか駐車できるスペースがあったので、そこに停めさせてもらいました。一の鳥居を撮影していると、北九ナンバーの軽自動車が通りがかりました。どうやら車を停めたがっていた様子でしたが、引き返していきました。あとで気づいたのですが、神社のある山の裏側に回ると車道が通っており、公衆トイレのある駐車場も準備されていました。石段をあがって参拝するまえに、境内をぐるりと拝見させていただいていると、その軽自動車がちょうど神社を後にしているところでした。崇敬者の意識として、やはり裏参道より表参道から正式に参拝したいということなのでしょうか。
石段を見上げ、一直線の石段にうんざりします。綾杉氏のブログでは、熟練の石工によるものか、ほとんど石段を上がっていると意識させない、登りやすいとされていましたが、果たして……。……ほんとうに、驚くほどスムーズに足が動きます。脚力の弱ったひと達を念頭において、石段の踏み幅を広くとり、段差を小さめにしているためです。今どきの一戸建てで、踏み板を大きく、足の上下動(段差高)を小さくとるのと、同じことを既にやっているわけです。自然の山に対して施工するわけですから、これが実現できるように傾斜などをしっかり確認しなければなりません。これ築山なのか?と一瞬考えてしまいました。まさかそのようなことはないでしょうが……。
石段を上がりきると、社殿が見えます。コンクリート造りで、社殿の正面向かって右手に境内社がまとめられており、左手に御輿庫とおぼしき建物があります。
ほとんどこの建物から何かを知ることができるとも思われず、目についた鳥居をくぐると、どうやら裏参道のようで、鳥居の先に、公衆トイレと駐車場がありました。意外なほど手掛かりがない……。とりあえず拝殿の石段に腰を下ろして、じっと考えてみました。
裏参道の鳥居の扁額を眺めたあと、さらに柱に彫り込まれた宮司の名前を眺めます。姓は「鶴我」とあり、「つるが」とお読みするのでしょうか……。
ちなみに、石段を下りると、由緒が彫り込まれた石碑があり、そこにも「鶴我」姓が見受けられます。どうやら代々、鶴我氏により、祭祀が引き継がれているようです。
香春町鏡山地区(旧田川郡勾金村)の隣は、採銅所地区(旧田川郡採銅所村)です。そこには現人神社があります。御祭神は都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)とされ、崇神天皇の別名だとしていました。現人神社、あらひとじんじゃ、あらひと……。
そうか。
「つるが」の「あらひと」ではないか?
日本書紀が古代朝鮮の王族とした都怒我阿羅斯等は「つるが あらひと」さん?
すると、鶴我氏が奉斎する鏡山大神社とは、神功皇后だけではなく崇神天皇にとっても聖蹟地である可能性も出てきます。
この鏡山大神社からほど近い香春神社には、辛國息長大姫大目命という名前で天細女(あめのうずめ。豊受姫・倉稲魂神とも)が祀られています。そして、残る2座には、天之忍穂耳と市杵島姫が祀られているのではないかとしました。天之忍穂耳と市杵嶋姫の子が大山咋であり、大山咋と玉依姫のあいだの子が崇神天皇(=「つるが」「あらしと」)です。
つまり、この一帯は崇神天皇の聖蹟地であると考えたほうがよく、鏡山大神社とは、足仲彦(仲哀天皇)亡き後の神功皇后が、崇神天皇の本拠地を頼った痕跡だと考えるべきなのです。
しかしこの解釈には、我ながら一点疑問も生じます。この鏡山地区と、京都郡みやこ町を結ぶ仲哀峠(仲哀トンネル)の存在です。「仲哀天皇が越えられた道」だから仲哀峠と呼ばれています。
この足仲彦(仲哀天皇)というのは謎の多い人物です。個人的には、熊襲出身の神功皇后の最初の夫という理解でいるのですが、重要なものを見落としているのかもしれません。
香春岳の近くに「採銅所」という地名があり、奈良の大仏や宇佐神宮の御神鏡の原料はこの地で採掘されました。天之忍穂耳-大山咋-崇神天皇の一族が活躍した背景には、この利権があったのはあきらかで、その地に、神功皇后の聖蹟地があり、また、後編で紹介する勾金陵墓参考地が存在するのも、当然と言えば当然なのです。
(中編に続きます)
福岡県神社誌:下巻214頁
[社名(御祭神)]鏡山大神社(気長足姫命、足仲彦天皇)
[社格]村社
[住所]田川郡勾金村大字鏡山字南原
[境内社(御祭神)]稲荷社(保食神)
(2020.09.27訪問)