生活困窮者です。
沈丁花が咲きました。玄関よりも家のなかのほうが良い香りがするためなにごとかと思ったのですが、室外機の裏側に通気口があり、そこから香りが家の中に入ってきているようです。
あとで「神社めぐり」の原稿を書こうと調べてみると、どうやらここには戦前まで「稚児忘:ちごわすれ」という集落があったらしいのです。
時々参考にさせていただいているホームページ「九州低山そうつ記」などでも紹介されており、行けばなんとかなるだろう?と思って、自宅を自転車で出発しました。
今回は、自転車と徒歩あわせて約21kmの行程でした。
下渕の集落を過ぎると、今回の目的地である稚児忘が見えてきます。
それにしても「子供を見失う」という集落名はインパクト大で、忘れようがありません。
今回も、12月31日同様、北辰社(白木神社)脇に自転車を停めさせてもらい、ここからは徒歩で向かいます。ヤマハの電動自転車とか、もっと高級なものに乗っていれば、登山口ギリギリまで自転車で行けるのでしょうが……。貧乏が憎い。
きれいな水流を眺めながら、林道を登って行きます。ところどころに大雨で崩落した場所がありますが、徒歩で登るぶんには問題ありません。
岩村神社にたどり着きました。道中の安全をお願いして、さらに奥へ足を進めます。
軽トラックが通れるくらいの幅に道板が掛けられており、しかもその道板の下には、丸太で補強がなされています。地図に載っている林道で、こんな補修はじめてみました。ほとんど誰も使わないからでしょうか。
元は田んぼだったと思われる場所に、小屋がいくつも建っています。近づくと、犬舎と鶏舎で、気配に気づいたのか、ずっと犬と鶏の鳴き声が響きます。近くには廃車となった軽トラックや2トントラックが半分錆びくれて放置されていたり、どこか荒れた気配があるものの、それなりに人手が入っている感じもします。そもそも犬や鶏が小屋や檻のなかで生きているのですから、定期的に誰かがここにやってきているはずなのです。
舗装された坂道があり、その脇に、おそらく民家があったと思われる広い敷地がありました。
ただ、事前に調べた話では、最後に離村した時点で2,3軒あったということですから、これだけでは敷地が足りません。それに、戦前の地図で建物とおぼしき点があった場所とも、離れています。
もっと上に集落本体があったのだろうと考えて、さらに登って行くことにしました。
林道を登ると、立派な石垣が見えてきました。田畑にしては石垣の積み方が立派で、どうもこの辺りから稚児忘集落の本体となるようです。
石垣のある土地ひとつひとつ、ここに家があったと言われてもおかしくない面積があります。なかには、立派などんこ(椎茸)が多数生えたホダ木も組まれているのですが、ホダ木が痛んで、かたちが崩れてしまっています。ひとの手がきちんと入っているなら、木組みが崩れたまま放置するはずはありません。ここ数年で、訪れる者が居なくなったのでしょうか。
すっかり枯葉で埋もれているため、パッと見ても石段とは気づきません。ただ、現在もこの石段はきちんと機能しています。ひとが足をあげた位置に次の段差がちゃんとくるようになっており、地震や雨風で狂ったりはしていないようです。
石段の先に在るのは、墓石でした。墓石や猿田彦かなにかの石碑がまとめられており、ここが昔は墓地だったことをうかがわせます。このようなまとめ方をしている場所は、たいてい改葬されているものです。おそらく、離村後に麓の納骨堂や墓地に移したのでしょう。
川を挟んで集落の反対側も、石積みがしっかりとなされています。あそこも田畑だったのでしょうか。集落の出入り口から出て、さらに登山をつづけます。
インターネットの情報にあったとおり、稚児忘の山頂を目指して、九電作業道のプラ階段を登り始めました。
14号鉄塔の横を過ぎると、今度は15号鉄塔まで作業道が続いています。途中、2か所ほど害獣除けの網がありますが、ひもで縛ってあるだけなので、簡単に通り抜けられます。
ところが、害獣除けの網を通り抜けたあとから、ほぼ自然にかえりつつあるむかしの作業道となります。足にからみつくツルに閉口していると、いきなりキャタピラ跡がある立派な作業道に出ました。
GPSで位置を確認すると、たしかにこの道で間違いないようです。
半信半疑で足を進めると、伐採現場に出ました。15号鉄塔が見えます。しかし、ここをよじ登る?そんな過酷なはずはない……。
左手に、おそらくは昔からの作業道がありました。何度か折り返しつつ登って行くと、15号鉄塔の下にたどり着きました。
古処山が見えます。今回、まともな眺望があったのは、このときだけでした。ここで昼食をとろうかとも考えたのですが、事前のインターネット情報では、ここから一気に経路がわかりにくくなるとのことだったので、我慢して先に進みます。
稚児忘山頂に到着しました。三角点があるのを確認し、古処山側を1枚撮影してみました。
(後編につづきます)