松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

「STAND BY ME ドラえもん 2」

 

休業中の個人事務所でお世話になっているかたが、体調不良のため単身赴任を切り上げることになりました。今後は、月イチ1週間程度来訪するスタイルに切り替えるということで、事情をお伺いするため、11月26日、小倉に出向きました。

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昼からお休みをいただいて小倉に行き、用件を終えると外はすっかり暗くなっていました。紫川のイルミネーションがきれいです。このまま帰るのも惜しいので、20日から上映がはじまったドラえもんの映画を観て帰ることにしました。

T・ジョイ リバーウォーク 北九州

映画『STAND BY ME ドラえもん 2』公式サイト

STAND BY ME ドラえもん2 : 作品情報 - 映画.com

原作漫画の名エピソード「おばあちゃんのおもいで」にオリジナル要素を加えてストーリーを再構築。前作で描かれた「のび太結婚前夜」の翌日である結婚式当日を舞台に、のび太としずかの結婚式を描く。ある日、優しかったおばあちゃんとの思い出のつまった古いクマのぬいぐるみを見つけたのび太は、おばあちゃんに会いたいと思い立ち、ドラえもんの反対を押し切りタイムマシンで過去へ向かう。未来から突然やってきたのび太を信じて受け入れてくれたおばあちゃんの「あんたのお嫁さんをひと目見たくなっちゃった」という一言で、のび太はおばあちゃんに未来の結婚式を見せようと決意する。しかし、未来の結婚式当日、新郎のび太はしずかの前から逃げ出してしまい……。

映画館はコロナの影響か閑散としています。20時15分上映開始なのに係員のかたが案内を忘れられ、上映時間を5分ほど過ぎてから入場しました。おかげで、上映開始前の長い宣伝を観ずに済みましたが、これほど客がいないと、大赤字でしょうね……。
生活困窮者が入場したあと、2組の家族連れが入ってきました。定員300名近い劇場に3組と、公開末期ならともかく、ちょっとあり得ない客数です。

(注)ドラえもんが流行っていないのではなく、映画館にひとがそもそも居ません

映画を観はじめてずっと違和感が付きまといます。話が破綻しているわけでもなく、CGアニメを受け入れられないわけでもありません。公式ホームページに記載された「あらすじ」と、目の前で映写されている物語に対する違和感です。
脚本が悪いとも思えないのに、前宣伝どおりに「泣け」ません。どこか醒めていく自分がいます。
いよいよ後半、のび太青年が披露宴会場に戻りスピーチを終えたとき、完全な思い違いをしていたことに気づきました。

「さっきまで別人だったでしょ。またドラちゃんに助けてもらったのね」と、のび太青年を見つめながらしずかがつぶやく姿で、違和感が氷解しました。

これ、のび太としずかの恋愛映画ではありません。

しずかの立ち位置が、漫画原作や初期の大長編映画の前提とは大きく異なっています。
突き詰めていけば、薄々、のび太としずかを結ぶ線はこう解決するしかないとはわかっているものの、通常はやらない設定です。

要するに、のび太の元を去った(たまに未来から来て会う程度になった)ドラえもんの代わりに、しずかはあらたな保護者(庇護者)になろうとしているわけです。ドラえもんを(無意識に)ライバル視しています。

再度、指輪交換する場面は、のび太にとって(観念的な)肉親が切り替わる場面ともいえます。

もうここまで書くとおわかりかと思いますが、表向きは恋愛映画の体裁をとっているものの、実態は、のび太少年とのび太青年を主人公とした教養小説(ビルディングスロマン)そのものです。

そこに最初から思い至っていれば(気づいていれば)、しずかののび太を見る視点が一般的な恋愛関係ではなく、どちらかといえば肉親の愛情(母性愛?)に近いことも納得がいきます。一般の恋愛映画だったらあり得ない、のび太青年の「僕が幸せになることがしずかちゃんを幸せにすること」という、25歳にあるまじきガキ発言が、なぜこの映画で肯定的に出てくるのかも、これが肉親の愛情を前提にしていると分かれば理解できるのです。