松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

林巨征「皇伝相性占術」(ナチュラルスピリット、2017)

皇伝相性占術

皇伝相性占術

 

物々しい題名ですが、四柱推命の地支の並び・方合・三会・干合・支合といった、どの(四柱推命の)教科書でも触れられている要素で相性を見る本です。なにか新要素があるのかと読み進めて、こちらが逆に拍子抜けしたくらい、基本をさらえた本と言えます。

天皇陛下や皇族の例がよく出てくるのは、題名に配慮しているのでしょうか。

たしかに、皇室や名家の縁談では、あきらかに占いを重視した組み合わせがみられます。実例紹介の素材としては、適当なのでしょう。ちなみに誰でも知っているワーストレディと前首相夫妻も、公称生年月日が正しければ、比較的良い組み合わせです。この夫婦も「ワーストレディの上司の紹介」だそうですから、ひろい意味でのお見合いと考えてよいと思います。

元は同じ四柱推命でも占者によって、注目する場所が異なります。この林さんの本は、天干地支の関係で見ますが、十二運の強弱、つまり力関係で見る占者も存在します。天干の関係のみでほぼ決まるとする占いもありますし、なにが正しいかは、正直わかりません。しかし、どれで見ても良い、もしくは次善の相性というのはたしかに存在します。ワーストレディ夫婦が良い例です。

ただ、この本のキモは、分析にあるのではありません。

ソコソコの相性を化けさせる「術」としての面が強調され、いくつか実例を示して対策法を説明されています。

四柱推命の本はいろいろありますし、日運・月運・年運による五行の変化(これを行運と言います)が重要だとあれだけどれも書いてありながら、個人運・男女運の穴を行運で埋めるという点は、こうやって指摘されなければさすがに気づきませんでした。それだけでも価格の価値がある本だと言えるでしょう。

しかし、四柱推命でいう相性の良さは、金運・出世を基準とした相性の良さで、心の相性や身体の相性をみるなら、宿曜などのほうがたしかです。そして、金運・出世によい相性とされるものほど、男女の力量が同じか少し違う程度で、通常であれば互いに魅力を感じにくく、成立しません(例外として方合、つまり似たもの同士すぎて馬が合うことはあり得ます)。
夫唱婦随か婦唱夫随となる組み合わせのほうがはるかに成立しやすいのですが、これは金運や出世には問題があることが多いものです。

読んでいて一点気づくのは、実例として挙げられている某夫婦のことです。彼の父親・祖父の世代と比較して、元々の男女の縁が薄いことをずけずけと(林さんがどこまで意図したかはわかりませんが)、書いています。地位が地位だけにこの夫婦の周囲にはそれなりの占者もついているだろうし、あまりこの夫婦の相性について考えたことはなかったのですが、とうとうこのレベルまで「術」で補う相手と結婚してしまう時代になったということでしょう。それが吉と出るか、凶と出るかは、いくら生活困窮といってもあと数十年は生きるはずですから、この目で目撃できそうです。