松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

連載50周年記念特別展「さいとう・たかを ゴルゴ13 用件を聞こうか……」

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21日、久しぶりに小倉・下関に出て、「ゴルゴ13」の特別展が下関市立美術館で行われているのを知りました。しかし、ポスターをみかけた時間が16時過ぎ。
入場は16時半までなので、とうてい間に合わないのであきらめました。
あらためて、24日に下関市立美術館に出直すことにしました。
今回、ふたたび知人の御子息が同行です。
先日の山口大神宮で「へー」「なるほど!」の独り言連発に驚愕し、さらに数日後の再訪記事を読んで「こんなことを考えていたのかとよくわかりました。妄想しまくるのは嫌いではないですが気持ち悪いです」とLINEを送ってきた彼ですが、ゴルゴ13はほとんど読んだことがありません。
彼の父親が所持している初期の「こち亀」に出てくるパロディキャラと、コンビニで買ったゴルゴ13を数巻読んだのみという状況だそうです。

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八坂神社とリバーウォークのあいだのお堀で待ち合わせしました。桜もやっと開き始めたかな?という感じです。
ここから西小倉駅に歩いて移動し、下関駅からサンデン交通で市立美術館に向かいます。

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「二度三度と味わえる展覧会はざらにはない」というセリフの元ネタは、ビアフラ戦争を題材とした「飢餓共和国」の「二度三度と味わえる女はざらにない」が元ネタです。祖国解放のために戦う少年兵の姿が印象的な作品でした。その話をすると、それを知って人生がどれだけ豊かになるのか、という憐憫のまなざしを向けられます。どうやら周囲に見知らぬ男性や家族連れが居る前で「女」の話を切り出したことに嫌悪感があるようでした。だってしょうがないですね……。

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原画展がメインですので当然場内は撮影禁止指定だらけです。その中に数か所、実際にモデルガンを持って試したりできる展示があり、そこだけは撮影OKになっていました。思ったより重いのにびっくりしました。これを持ってゴルゴはあれだけの運動ができる……さすがすぎます。本物の男です。
 
展覧会の目玉のひとつが「海に向かうエバ」の原画展示です。
「海に向かうエバ
「ペチコートレーンの夜霧」
「白夜は愛のうめき」
……どれもゴルゴとヒロインの愛を語る傑作ですが、その中でも「海に向かうエバ」は群を抜いていると思います。
こんど原画をはじめて拝見し、表紙のエバが紙張りの上から書き直されていることに驚きました。
最初よりもはるかにケバさのない、すっきりとした顔に。針を使う殺し屋(まるで仕事人?)の強面さより、女性らしさを表にだすよう、書き直されています。そして、終結近くの子供たちが遊ぶところをエバが通りかかる場面も、あとからエバが書き足されています。以前からこの場面の遠近感が謎だったのですが、いちど出来上がった子供たちの姿に、書き足されていたのです。つまり、最初、作者はエバからみた子供の遊ぶ姿を描いたものの、やがて思い直し、エバが子供を見つめる姿に変更したということです。視点を移動させた理由はなにか。童心にかえって子供たちと遊ぶ場面を強調したかったのかもしれません。ゴルゴに負けないkilling machineも、最後は人に帰って、ゴルゴに狙撃されて亡くなる……。愛を語ることもプロには許されないのか、人に戻って死を選ぶこともゴルゴへの愛なのか……。いつ読み返しても傑作としかいいようのない作品ですが、中学生に感想を求めると「好きなら殺すことはあり得ない。彼女のほうがゴルゴを愛していて、ゴルゴはそこまで愛していなかったに違いない」といった発言をします。……社畜的発想とまったく無縁でうらやましいかぎりです……。

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美術館の入口にも「ずぎゅーん!」とゴルゴでよく見かける擬音が自動ドアいっぱいに描かれていました。
原画展に90分居たのは、なかなかないのではないでしょうか。ただし、そのうち10分ほどは「好きな人を金のために殺す恋愛ものなんてあり得ない」「プロとして仕事を請け負った相手がたまたまむかし惚れた相手だったが、ゴルゴはひけなかったのだ」「そこまでおカネが重要なのか」と休憩室での議論ですが。

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ゴルゴ展を出て、そのまま歩いて長府の街並みを散策します。
忌宮神社まで30分ほどで着く距離なのだと知り、少し驚きました。
途中の街並みが大変整備されているのが印象的です。

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そのまま歩くと乃木神社がみえたので、成績UPをお願いしました。
横の武道場からはなんの稽古かわかりませんが、若い男女の掛け声がします。
「受験祈願って、乃木というひとはそんなに成績がよかったのか」と訊かれ「知らん」と答えながら、乃木大将ではなく彼が乃木と呼んだことに、隔世の感をおぼえました。203高地とか、秋月の乱の官軍側指揮官だったこととか、知らないのでしょうね……。

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乃木神社を出て、忌宮神社・荒熊稲荷神社にお参りします。
境内にある根上りになっている木が面白いようで、何故こうなるかと訊きます。根上りは最初、根っこを覆っていた土が長年の雨風で流れ、根っこが見えるようになったものだという話をします。
 
長府の町をでたあと、下関駅から電車に乗り、西小倉駅で解散しました。
「ゴルゴ13って本当に、面白いですね。
 それでは、さよなら、さよなら、さよなら……」
(おまえは映画解説者か)