松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

ムリはムダ

先日、いまの勤務先の人間関係に悩み、心療内科で薬を処方してもらい服薬しながら通っているというかたと話す機会がありました。
そこまで無理をしてもなんにもならないと本人に伝えました。
服薬しながら働いたところで、会社や同僚・上司は生涯面倒を見てくれるわけではありません。健康を害したぶんだけ、家族や親兄弟に面倒は降りかかります。
むろん、会社から給料をもらってこれまで生きてきたということは、家族や親兄弟もその恩恵をうけています。要は、本人を中心に会社と家族(や親兄弟)が機能分担しているだけなのですが、できれば、お金はもらっても負の部分なんて押し付けられたくありません。
それに気づけば、無理してそんな会社にしがみつくことがどれほどバカらしいか、わかることでしょう。
ひとつなにかをつかめば、ほかのものを捨てているのです。いちど捨ててしまうと、それがどういう結果をもたらすか、わかりません。私たちは無限の分岐のなかを生きています。ある哲学者が言うとおり、自由の刑に処せられているのです。
自分が守らないといけないと考えているものが、庇護にはいることを求めているとはかぎりません。もしかすると、息苦しさを感じているかもしれません。ひとは境遇に慣れる能力がたかい生き物ですが、逆に、してもらって当たり前とすぐに思いあがる生き物でもあります。
日頃のちょっとしたイライラは「こうしてくれて当たり前」という思い込みに起因するものが多いと、振り返って感じることはありませんか。

「自分がやらなきゃ誰もやらない、できない」と、自分をふるい立たせるのは大事だけれど、ほんとうに居なくなったら明日から困るものがどれだけあるでしょうか。
立ち止まることも人生だし、あえて自分から降りるのも人生。
ただ重要なのは、自分のできる範囲で手抜きをしないことです。
そうしていれば、食いっぱぐれることはありません。