松村かえるの「かえるのねどこ」

旧「美風庵だより」です。

御線香

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赤貧の手元にある御線香を並べてみました。
画像でいちばん右側にあるのが「富嶽」というもので、当時の売価はなんと20万でした。いちど終売となり、現在は後継品がでています。赤貧が購入した当時からこの商品は赤字だったらしいので、同じ値段でも、おそらくこれと同じ品質のものではないでしょう。
香りは華やかさもありながら厳しさが感じられます。甘ったるさが高級の証だと思っているむきには、ほんとうに原料を極めると、ここまで寒気すらあるほど厳粛な雰囲気がただようことに驚きをおぼえるでしょう。
その左側の「荷葉」は、「富嶽」とあわせて終売となったとき、あわててひとつ買い求めたものです。「富嶽」よりもだいぶ明るい華やいだ雰囲気があります。一般的な意味での高級感は、こちらのほうが上です。
大観や金剛は、この日記でもときおりとりあげています。このクラスが高級な日常品、クルマならクラウンあたりになるでしょう。
大観には以前「特選」伽羅大観と名がつくものがありました。ここからいきなり香りの系統が変わります。いったん高級線香が終売となったあと、「桃山」と銘する商品が登場しました。赤貧はまだ試していませんが、おそらく値段からみて、「特選」の後継品だろうと思われます。「特選」の香りを試したければ、同じ日本香堂グループの天薫堂から「薫琳」という商品名で出ているものが香りは近いので、試してみることをお勧めします。
ついでに言えば、この「特選」「薫琳」の香りをより上質の原料で磨きぬいていったのが、もっとお値段のよい線香の基本路線です。逆に言えば、練香をほうふつとさせる人工原料に頼らない香りを良いと感じることができるかどうかが、大観よりも高い商品に手を出してみるかどうかの分かれ目と言えます。いまはどうか判りませんが、赤貧が若いころは、メーカーも香りは試させるものとよく判っていたので、店頭などで匂いをかがせてくれました。とくに高額商品ほど、作った際の切れ端を準備してくれていたものです。いまになってみればなんと贅沢な時代だったかと思います。
あれがなければ、様々なメーカーを聞き比べて自分の好みを探すなんてことはできなかったでしょう。そういう意味では、はるかに豊かな時代だったといえます。
そして思うのは、若いころにこれがよい、と思ったものは、いつまでもそれが良い、と感じてしまうことです。やはり「三つ子の魂は百まで」なのだと痛感します。