美風庵だより

幻の花散りぬ一輪冬日の中

「冬の旅」

冬の旅

冬の旅



再読しました。
行助の生き方はある意味理想ではあるものの、ここまで全部自分でしょい込もうとする生き方は、いよいよ社会に出たら行きづらさに息詰まることになるでしょう。そう考えると、行助が特別少年院から退所する手前で話が終わるのも、そこで終わらせなければ清い生き方のままで終わらせることができなかったからだと思われます。
破傷風と思われる病で倒れるところで話は終わりますが、おそらくここで行助は死にません。簡単なことで、厚子との今後がところどころに暗示されていて、語り手が一歩抜け出た立場から物語の説明を加えている部分との整合性がとれなくなるからです。
これは、いずれ最後はこの語り手が行助本人であったということになるか、続編が書かれる可能性があったとみるべきでしょう。
ただ、実質的な続編は、ほかの小説(「水仙」など)ではたされており、「冬の旅」一編で話が完結しているというわけでもありません。立原正秋には主人公を同じくする一連の作品群である「国東重行もの」「石見次郎もの」がありますが、この両者と根底を共通し、さらに俗世から純化した存在が宇野行助であるといえるでしょう。