美風庵だより

幻の花散りぬ一輪冬日の中

「王の挽歌」


三枝成彰:チェロ協奏曲「王の挽歌」

 

コンチェルトの夜−Four Concertos−

コンチェルトの夜−Four Concertos−

 

 初演が1993年なので、いまから20年以上むかしの作品です。久しぶりにテレビから流れるメロディーを聴いて「これの元はなんだったっけ?」と考えていたら思い出した次第。チェロがうたうメロディーは、のちに「忠臣蔵」というオペラ(遊女が「私を殺して」と歌う場面)にも転用されます。時代劇の劇伴などを手掛けた三枝さんらしい、非常にわかりやすいメロディーの曲なのであまり玄人受け(芸術愛好家受け)しませんでしたが、悪い曲ではないとおもいます。
とくにこの作品の重要な点は第2楽章で(それこそのちのオペラなどに転用されたメロディーも多いのですが)、チェロがうたう内省的な音楽は、そのわかりやすさもあって聴きやすくまた、涙を誘います。三枝さんって、こういうお涙頂戴をやらせたら本当に最高の作曲家だとおもうし、もうこういうひとはたぶん登場しないでしょう。「王の挽歌」をてがける前の「ゼータガンダム」から、1998年の「忠臣蔵」「レクイエム」あたりまでが、三枝さんの大絶頂期だった気がします。もうひとつ付け加えるなら、「ヤマトタケル」というミュージカル(本人は「オラトリオ」と主張していますが)がありまして、これがまた異常にすばらしい。
もう、こういう感傷的で美しく浪花節なメロディーが書ける作家は登場しないかもしれません……。