美風庵だより

幻の花 散りぬ一輪 冬日の中

練香を空薫する。

香十 練り香 藤袴 壺

香十 練り香 藤袴 壺

 

 

赤貧の数少ない趣味のひとつに、香があります。
近年、香木、とくに沈香の値上がりが著しいため、御焼香を空薫することが多くなりました。本当は沈香の香りだけを味わってゆっくり過ごしたいのですが、どんどん入手が困難になっていくことを考えると、あまり贅沢も言えません。
ふだんは丁子の利いた焼香の香りもよいのですが、こう涼しくなってくると、もう一段と深みのある香りがほしくなります。そういうときは、練香の出番です。
といっても、練香の香りは複雑で重いため、年に数回楽しめばよいほうです。練香は、さまざまな香料に炭と蜂蜜を加えて練り、熟成させたものです。蜜由来の甘さと、含まれるさまざまな香料の香りが溶け合い、線香や焼香では味わえない香りがします。この複雑さを、若いころはむかしながらの香りとして憧れたものです。齢をとりすぎたせいか、もっとシンプルな味わいがよくなってしまい、ここ数年は、年数回くらいしか楽しむことがなくなりました。
赤貧がむかし気に入り、いまも愛用している「藤袴」は、練香のなかでもさっぱりとした香りがします。日本香堂さんの製品は、他社と比較しても明るめの香りになるよう調製されたものが多く、どこか華やかです。赤貧が使っているものはもう10年以上むかしに買い求めたもので、ちいさな壺と桐箱におさめて保管しています。

あれから価格改定を繰り返し、当時より2割ほど値上がりしてしまいました。いま市販されているものは、当時と変わらぬ配合であると思いますが、怖いものみたさで買い求めてみたい気もしています。